握り締められた部分がじわりじわりと熱くなってくる。握った拳には、密かに汗が滲む。

「俺と…付き合って、みま、せんか?」

とぎれとぎれだけど、ポチの声は確実に俺の耳まで届いた。

ずっと握られていた手首を急に解放される。解放された俺の腕は、自然の法則に則って重力の掛かるまま元の位置へと戻っていく。

「無理」

目を潤ませているポチには申し訳ないけど、俺にそっちの気はない。

一言そう言うと、今度はポチの手が俺の頬をスルリと撫でた。奴のそんな行動に思わず肩を震わせる。
俺の顔の感触を確かめるように、はたまた輪郭を確かめるように、細い骨ばった指が優しい手つきで頬を触り続けていた。

「おいっ…やめろ」
「試しに、で、いいんです」
「はぁ?」

頬っぺたを撫で続けていた指が、ゆっくりとした動きで唇へと移動する。
ポチの指が少し開いた俺の唇を親指でなぞった。

「っ、おい」
「鳴海さん。お願いします」

されるがままにしていたけど、このままではなんだかまずい気がしてポチの手を振り払う。

「だから、無理だって」
「…鳴海さん」

あぁ…この顔が駄目なんだ。
人の目をジッと見つめてくるこの感じ。

「試しに…だからな」
「えっ!嘘!?」
「お前が言ったんだろ」

さっきとは打って変わっていきなり笑顔になるポチに、溜息を吐かずにはいられない。



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