「あ、終わった?」

火の点いていない煙草をくわえた九条が部屋の中まで入ってきた。
ポチの力が弱まったその隙に、スルリと腕から逃れる。

「鳴海さん。そっちのが似合ってんね」

大人びた九条がポチみたいにガキ臭く笑って言うもんだから、柄にもなく照れてしまう。
薄くなった髪の毛をガシガシと掻いて誤魔化す。

「あ、さんきゅ…じゃあ、俺、帰るから」
「…あ!俺送る!」

なんだか気まずくなってしまって…この空気が耐えられなかった俺がそう切り出すと、送ると張り切ったポチが嬉々としてジャンパーを羽織った。
その間に俺も支度を整える。


九条にも玄関先まで見送って貰ってしまって、男として些か情けなさを感じつつも、好意なんだと思うと素直に嬉しい。
ヒラヒラと適当に手を振る姿も、煙草に火を点ける姿も、何をしても様になる九条を尻目に駅までの道をポチと二人で歩き始めた。

「鳴海さん…今日は、いきなりすみません」
「…お前、謝ってばっかだな」

両手をポケットにしまい込めてクスリと笑いを漏らす。

「鳴海さん。プライベートなこと聞いていいですか?」
「んー?」
「俺、鳴海さんのこと知りたいからさ」

相変わらず子供みてぇな笑顔を向けてくるポチに、思わず苦笑を浮かべた。

「はぁ……何?」
「誕生日は?」
「5月5日」
「子供の日だっ。じゃ、血液型は?」
「AB」
「じゃあ、趣味!」
「…寝ること?」

好きな食べ物、嫌いな食べ物、特技やらなんやら…何がそんなに楽しいんだか、生き生きとしたポチが色々と質問を繰り返してくる。

「じゃあさ…今、彼女とかは?」
「…………」
「いるんですか?」
「黙れ」



: :



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -