テキパキと作業を進めていくポチに対して、鏡越しにその様子を窺うことしか出来ない。

「はい。鳴海さん…真っ直ぐ鏡見て」

準備が終了したのか、左右のこめかみの辺りに指を沿えて真っ直ぐと前を向かされた。

俺の顔のすぐ横にポチの顔が近付けられる。
鏡に映る二人の姿が、なんだかあまりにも掛け離れているように見えた。

「ちょっと揃えるくらいかなー?」

毛先や頭頂部の毛を摘みながら真剣な表情を浮かべるポチ。

こいつでもこんな顔するんだ…なんて、さりげなく鏡越しにポチを見ていたつもりが、ばっちりと目が合ってしまった。

「ん?大丈夫だよ、あんまり切らないから」
「あ、あぁ…」
「オシャレな感じにもしたいけど、鳴海さん会社勤めでしたよね。…髪型とか厳しそ」

そう言って眉をしかめる。
明らかにコイツは会社勤めとか出来なさそう。

「…ふふ」
「え?何?」
「いや。ほら、早く切れよ」
「あ、はい」

早く切るように目で促すと、ポチが俺の髪の毛を弄り始めた。
髪を切って貰うのが初めてって訳でもないのに、何故か緊張する。

ポチの手が動く度に髪の毛の束が落ちる。
鏡の中で髪の毛を切られている自分を見ているつもりが、いつの間にか真剣な表情をしたポチを見ていた。



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