そういえば、さっきから同じ塀が続いていた気がする。
先程歩いてきた方を振り返ると、やっぱり遠くから同じ塀のまんまだ。
「何…ここ?」
俺の問い掛けを堂々と無視して、ポチと九条はなんの躊躇いもなしにその豪邸へと入って行く。
踵を返したい気持ちをグッと堪えて、俺も敷地内へと足を踏み入れた。
「うわぁ…庭広い」
「鳴海さん、よそ見してはぐれないで下さいよ」
「わ、わかってるよ」
九条に軽く睨まれたのと、この敷地の広さに圧倒されて、思わず畏縮してしまう。
落ち着きなく辺りを見回していると、能天気な笑顔を浮かべたポチが俺の隣に並んできた。そんなポチに眉根を寄せると、背中を優しく摩られる。
「鳴海さん、大丈夫?」
「え?」
「ここ、正臣ンちなんだ」
未だ俺の背中を摩りながら、軽く衝撃発言。
ポケットに手を突っ込んで目の前を歩いている九条の背中を見つめる。
「何?あいつってボンボンなの?」
なんとなく小声になってポチに聞く。
「まぁ。でも、正臣それ言われるの嫌いだから」
人差し指を唇に押し当てるポチが俺より大人びて見えて、少し悔しく感じながらも、すぐに顔を逸らした。
「あ。でも今は正臣も稼いでるからなぁ」
「ふーん。あいつって何の仕事してんの?」
「社長秘書。まぁ、社長は正臣のおじさんなんですけどね」
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