俺より少しでかい手でがっしりと握られて、中々離してもらえない。
力を入れて引こうとしても、目の前の男は力を緩めるどころか、更にきつく握ってきた。

「ちょっ、正臣!お前さっさと離せ」
「ごめんごめん」

俺が言おうとしてた台詞を盗られてしまった。
ポチが軽く怒っている様子を見ると、九条も呆気なく手を離してくれる。九条と俺の間に割って入ったポチは、子供みたいに頬を膨らませていた。
そんな姿が可笑しくて、笑みが零れる。

「鳴海さん!こいつバイだから、気をつけて!」

今度は、ポチが俺の手を両手でがっちりと握ってきた。
あまりの剣幕に、思わず一歩後ずさる。

「あ〜…心配しなくても沢の知り合いに手ぇ出さねぇから」

面倒臭そうに頭を乱雑にガシガシと掻きながら溜息を吐く九条。
バイってことは否定しないんだな、なんて考えつつも口には出さない。

九条の台詞に安心したのか、小さく俺に笑みを向けて握っていた手をあっさり離す。

「じゃ、鳴海さん。こっち」
「は?」

そういえば、目的を忘れていた。
颯爽と歩く九条の後を楽しそうについて行くポチの、更にその後ろをついて歩く。

「なぁ…どこ行くの?」

ボソリと呟くと、先頭を歩いていた九条の耳にも届いたのか、くるりと振り向いた。

「…沢。お前、言ってねぇの?」
「え?うん」
「はぁ…。鳴海さん、ここ」

九条が指差した方に目を向けると、一軒の家。
いや、家なんてもんじゃない…一軒の豪邸。



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