「鳴海さん!」

俺を見付けるなり笑顔になるポチ。
本当に尻尾が生えていたのなら、今頃ちぎれるんじゃないかってくらい振りまくってるに違いない。

「…ポチ」
「それ止めて下さいよ」
「え?」
「三澤沢です」

自分のことを指差しながら改めて自己紹介をするポチ。
無邪気に笑うその顔には、まだあどけなさが残っている。

「…ポチでいいよ」
「な!俺が嫌なんですってば〜」

眉根を寄せて焦る。
なんだか、今更名前を呼ぶのも気恥ずかしくて顔を背けた。
派手な見掛けによらずヘタレなポチは、俺の服を駄々をこねる子供のように握る。

「沢…放せよ」

なんだか、名前を呼ぶだけなのに変に緊張してしまった。
名前を呼んだ後に少し間が空いてしまって、あからさまに緊張しているのが分かって恥ずかしい。

「鳴海さっ…はい!あ、ごめんなさい」
「つか、用は?」

満面の笑みを浮かべて手を放す。
最早この空気が恥ずかしい俺は、そう切り出した。

「髪、切らせて下さい」

唐突に言われて、一瞬固まる俺。
あまりにも真剣な顔で言うもんだから、素直に首を縦に振ってしまった。

「え、どこで?」
「…こっち」

疑問を投げ掛けると、俺の意思なんてなんのその…。
派手な見掛けには不釣り合いな真剣な表情のまま俺の手を引っ張って足早にどこかへと歩みを進めた。



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