「…メールしろって、言わなかったっけ?」
『あ、ご、ごめんなさい』

まさか電話がくるとは思わなかった。
メールがくるとばかり思っていた分、なんだか拍子抜けする。
電話越しなのに、向こう側でポチが焦っている姿が浮かんで、思わず笑みが零れた。

「別にいいけど。…で?用は?」

片手はポケットに突っ込んだままで、近くのベンチへ腰掛ける。
ジッとしていると段々寒くなってきて、携帯を握る手が強く締まった。

『鳴海さん。これから時間ありますか?』
「これから?」

ポチにそう聞かれてポケットに突っ込んでいた手を出す。そして、手首についている時計に目をやった。

現在の時刻、だいたい三時。
千秋とも別れたし、時間はあるっちゃある。

ゆっくりと進む秒針を眺めながら、返事を躊躇ってしまう。

『あ…えと、いきなりすみません』
「いや、大丈夫。…時間ある」
『じゃ!じゃあ!さっき会った場所に今から行きます!』
「え、あ、ちょ!」

興奮し出したポチは、そのまま電話を切りやがった。
まさか今すぐだと思わなかった俺が制止したにも関わらず、耳元の携帯からは規則正しい機械音が鳴り続ける。
画面を見ると、見慣れない番号。
数秒、その番号を眺めてから名前を登録する。
誰に見せる訳でもないけれど、なんとなく『ポチ』と入れてしまった。

携帯を閉じると、乾いた音が響く。
なんとなく楽しくなってきた俺は、軽やかな足取りで先程の場所へと向かう。



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