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「ユキ、大好き」
ふわり、と、優しい笑みを浮かべる由香。
ロングスカートを風になびかせながら、その長い髪の毛を耳にかける。
俺は、由香のその仕種が大好きだった。
「結婚しようね」
何度も約束し合ったし、プロポーズもした。
「ユキ、愛してる」
何度も肌を重ねた。
俺は、由香を本気で愛していたんだ。
「ユキ!」
「そんなにはしゃぐなよ」
幸せだった。
他愛もない話をして、くだらないことで喧嘩して、すぐに仲直りして。
由香と結婚して、この幸せがずっと続くんだと思っていた。由香のことを一生幸せにするつもりだった。
「…ごめんね、幸福」
それが最後に聞いた由香の言葉。
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