01
「まさき〜」
「うわっ!酒臭ぇ」
ガチャリと勢いよく玄関を開けた部屋の主を出迎えると、相当呑んできたのか、フラフラしながら俺に抱き着いてきた。
一回りも体格が違うせいで、そのまま2人とも玄関にぐしゃりと倒れ込む。
「うあ!悠一さん、重いよ!」
抱き着いたまま、急に耳をベロリと舐められた。
「っあ」
「真樹くんの感じる場所〜」
ケラケラと楽しそうに、質の悪い酔っ払いが俺の耳を舐めたり指で弄ったりと、好き勝手にする。
そんな勝手な行動にムカついて、俺の足の間に入り込んでいる悠一さんの腰を足で絞めつけた。
「いでででで!」
「死ね。この酔っ払い」
「ギブ!ギブ!」
床をバンバンと叩く音が玄関に響き渡る。
そんなに強く叩いたら、下の階の人が迷惑だろうに。
そんなことにも気が回らないのか、このおっさんは。
とりあえず、悠一さんの腰に絡めていた足を解いた。
上に覆い被さっていた悠一さんは、立ち上がってから、俺に手を差し延べて立たせてくれる。
なんだかんだで、悠一さんはさりげなく優しい。
「さ、飲み直すか!」
「ちょ!まだ飲む気かよ」
「もちろん。真樹、お前も付き合え」
ガッシリと肩を組まれて、無理矢理キッチンまで一緒に歩かされる。
酔っ払ってるときのコイツは本当に質が悪い。
「俺、未成年なんだけど…」
「ん?まぁ、大丈夫だろ。一杯だけ、一杯だけ」
「ダメな大人」
お酒を用意しながらガハハと大口開けて笑っている悠一さんが、すごく駄目人間に見えて、思わず溜息が洩れる。
だけど、それに付き合って晩酌をしようとしている自分もどうしようもないな、なんて思いながら楽しそうな悠一さんに目をやった。