相田爽くん
1年3組、相田爽。
誕生日が確か7月で、血液型はB型。
趣味・特技はサッカー。
高校に入学してすぐにサッカー部に入部したけど、中学の頃の怪我が原因で既に退部済み。
叶わぬ恋5
あれから一週間しか経ってないのに、目の前にいる後輩にすごく詳しくなった気がする。
「椎葉先輩って好きな人いるでしょ」
「何、急に」
俺は、苦笑いするしかなかった。
「だって、いっつも窓の外見てるし」
そう言いながら爽くんは立ち上がって、窓に近付いて校庭を眺める。
俺は、心臓がバクバクしているのを小さく深呼吸をして落ち着かせた。
「いないよ」
「えー!嘘つかないで下さいよ」
「ついてないって」
あれから毎日のように爽くんは部室に来ている。
それとは対象的に、あれほどこの部室に通うように来ていた夏見が全く来なくなってしまった。
爽くんの言う通り、俺はいつも窓の外を見ていた。
校庭にいる夏見を見つける度に、隣にいる彼女も目に入って自分が傷付くだけだったけど。
「先輩、今度遊びに行きましょう?」
いつの間に目の前にいたのか、子供のように無邪気に笑いながらそう誘ってきた。
その幼い顔が可愛くて、頭をポンポンと撫でる。
「うん、今度ね」
「やった!先輩とデート」
「デートなんだ」
嬉しそうな爽くんを見てると、なんだか俺まで嬉しくなってくるから不思議だ。
「円先輩」
いきなり、開け放してあるドアの方からコンコンとノックをする音と、俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきて、そっちを見る。
「あ…夏見」
「円先輩。俺、また彼女と別れちゃった」
ニヤリと不敵に笑ったかと思ったら、俺に近付いてくる。
夏見と話をするのがすごく久しぶりな気がして、心臓のドキドキが止まらない。
この心臓の音が、夏見や爽くんに聞こえてしまうんじゃないかと思うと、怖くて仕方ない。
「慰めて貰いに来たんだ」
俺の耳元でそう囁く。
チラリと爽くんを見たら、眉間に皺を寄せて、嫌そうに夏見を睨んでいた。
「一緒に帰ろう?」
夏見からそう誘われて、俺が断れる筈もない。
俺は、熱くなった顔を小さく頷かせた。
「爽くん。ごめん、今日はもう帰るね」
「はい…………椎葉先輩!」
俺と夏見が部室から出て行こうとしたら、爽くんが叫んで、俺を呼び止める。
「デートの約束、忘れないで下さいね」
「うん、忘れない」
爽くんが笑っているのを見て、俺も自然に笑みが零れた。
「先輩、早く帰ろう」
急に夏見に手を引かれて、俺はそれだけで緊張してドキドキしてしまう。
夏見の横顔を見てたら、急にクルリとこっちを向いてきて目が合った。
「……………」
「な、何?」
「なんでもない」
よくわからないけど、そのまま夏見はズンズンと歩いてしまう。
置いて行かれないように夏見の一歩後ろを歩きながら、俺は初めて校庭から部室を見上げた。