新たな後輩






ガラッと勢いよくドアが開く音がした。
また来たのか、と、いつものように後ろを振り向く。













叶わぬ恋4













「あれ?」

そこに立っている人物が思っていた奴と違くて思わず声を出してしまった。

「先輩!俺、先輩に憧れてます」

ドアの入口に突っ立ったまま、顔を真っ赤にしながらそう言う。
俺のことを先輩って呼ぶくらいだから後輩なんだろうけど、正直誰だか全然わかんない。

「えっと、君は?」
「急にごめんなさい。俺、ピアノ弾いてる先輩が綺麗で、すごく好きなんです」

名前を聞きたかったんだけどな。

そう思いつつもその後輩の話を聞く。

「あ!好きって言ってもそんな意味じゃなくて!」

焦ったように手をブンブンと振るそいつがすごく幼くて、可愛い。
俺は思わず噴き出して笑ってしまった。

「ふふふ」
「先輩、笑った顔も綺麗」

恐らく独り言であろう小さく呟いた後輩の声が聞こえてしまった。
目が合うと、後輩は歯を出して笑う。
その顔が、なんとなく夏見に似ていて、心臓がチクリと痛くなった。

「で、結局何しに部室に来たの?もしかして入部希望?」
「先輩と友達になりたくて来ました!」

真剣な表情でハッキリそう言う。
俺と友達になるためにわざわざ放課後に部室にまで来るなんて…

「先輩といられるなら入部するのもいいかも…いや、でも歌下手くそだしなぁ」
「ふふ…いいよ、友達」

ブツブツと一人で喋っている後輩に手を差し出す。
すると、後輩は嬉しそうに満面の笑みを浮かべて俺の両手をガッシリと掴んだ。

「ありがとうございます!」

こんなに喜んでくれるなんて、俺の方が嬉しくなってしまう。
子供みたいに目をキラキラと輝かせている後輩を見て、可愛いな、と思った。

「よろしくね」
「はい!先輩、早速一緒に帰りましょう」
「え、今?」
「やっぱ…ダメ、ですよね」

目に見えてガックリするのを見て、すごく悪いことをしている気になる。

「ううん、一緒に帰ろう」

そう言ってうなだれている後輩の頭をくしゃくしゃ、と撫でてあげるとパッと顔を上げて嬉しそうに笑った。

うん。なんか、犬みたい。

「じゃあ帰りましょう!俺、先輩のこと色々知りたいです」

悪いけど、楽しそうに話している後輩の声が耳に入ってこない。

今日も相変わらず窓から校庭を見ていたのに、夏見がいなかった。
だから、部室に来ると思ってたのに。

もう少し夏見のことを待っていたかったけど、後ろ髪を引かれながら部室から出た。



 



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