無言の言葉






「円せ〜んぱい!俺、また彼女できたんだ」





なんでそんなことを言いに来るんだろう。
この間のキスは一体なんだったんだ。













叶わぬ恋3










「あれ?シカト?」
「え、あぁ…良かったね」

我ながら、心が篭ってないな、なんて思いながらニッコリと微笑んでそう言う。
急に夏見が近付いてきて、俺の耳元に唇を寄せた。

「本当にそう思ってる?」

相変わらずクスクスと俺を馬鹿にしたように笑う。
夏見に見透かされたようにそう言われて、顔に血が集まっているのか熱くなってきた。

「思ってるよ」
「ふーん」

そう言ってアッサリと俺から離れてくれた。
俺から離れた夏見は楽しそうに小さく鼻歌を歌いながら、窓から校庭を見下ろす。

そんな夏見の後ろ姿を見て、ふと、いつも疑問に思ってたことを問い掛けてみる。

「なんで、いちいち俺に報告するの?」

なんとなく、返答が怖くて少しだけ声が震えた。

「ん?俺ねぇ、円先輩の困ってる顔が好きなんだ」

俺のことを指差してハッキリそう言った。夏見は楽しそうに笑っている。
まさか、困っている顔が好きなんて言われると思わなくて、俺は何も言えなくなってしまった。

夏見は窓をコツコツと指で小さく叩く。

「今日も、こっから見ててね」

そう言うと、部室から出て行ってしまった。



少しすると、下駄箱の方から夏見とその隣には新しく出来た彼女の姿があった。

さっき彼女が出来たと聞いていた筈なのに、実際に2人でいる所を見てしまうと、やっぱり切ない。

「ばか夏見」

小さい声でなんとなく夏見の悪口を呟いてみる。

彼女と話していた夏見が、急にこっちを見た。
口パクで何かを言ったみたいだけど、この距離だと夏見が何を言ったのか全然わからない。

だけど、夏見はまた彼女の方を向いてしまった。
結局、俺は部室に一人ポツンと残された状態になる。

「意味、わかんない」

小さく呟いたつもりの声も静かな部屋ではすごく響いた。
俺は目頭が熱くなるのを感じながら部室から出て行く。



 



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