叶わぬ恋
「俺、彼女できたんだ!」
何回目だろう。
嬉しそうに話すお前を疎ましく思うのは。
叶わぬ恋
「ふふ…また?」
「なんだよ、またって」
俺が笑いながらそう言ってやると、頬を膨らませて拗ねたようにそっぽを向いてしまった。
「いちいち部室にまで言いに来なくてもいいよ」
「だって先輩に1番に教えたかったから」
お前のその台詞に、俺がどんなに傷付いてるかわからないだろう?
嬉しい筈なのに全然嬉しくない。
「先輩、元気ない?」
「いや…元気だよ」
「そう?ならいいけど…あ!俺これからデートなんだ!じゃ、先輩またね!!」
急いで立ち上がると、勢いがよすぎたのか椅子がガタンと大きな音を立てて倒れる。
その椅子を急いで直して、俺に手を振ってから騒がしかった奴はそのまま部室を走って出て行った。
「好きだよ」
騒がしい奴がいなくなった部屋でポツリと呟く。
小さい声の筈なのに、部屋に響いた。
傍にあった窓から外を覗くと、カップルが楽しそうに下校している。
それを見ただけで俺の目からは涙が溢れていた。
好きになんてならなきゃ良かった…
でも、それでも大好きなんだ。