06.足りない核




天は二物を与えず、と誰かが言った。

そんなの嘘だ。
私はいつも姉と比べられてきた。しかも双子だから尚更だ。いいところは全部さくらがもってた。だからイノセンスが私だけに適合してると聞いた時、本当はちょっと嬉しかったんだ。さくらにないものを持ってるという事実が。私だって人の役にたてるんだって。


でも、こんなんじゃ・・・


「やなぎ・・・・・」

「!!・・・ごめん。ぼーっとしてた。」

「悪い方へ考えては駄目だ・・・シンクロ率は精神の状態でも変わる・・・」

「そう、だよね・・・」


やなぎはペタンと床に座った。冷たい。こんなに私はイノセンスを必要としてるのに、なんで応えてくれないんだろう。


「ねえ、ヘブラスカ。」

「どうした・・・」

「私のイノセンスってどんな感じなの?」

「やなぎの、か・・・・」


ヘブラスカか少し間をおいた。何かをためらっているようで、それがまたやなぎを不安にさせる。


「イノセンスには光の強さがあってな・・・」

「うん。」

「やなぎのは・・・・・


それが弱いんだ。」



神様なんていないと思った。いたとしても、それはとても不平等で怠惰で私には関係がないんじゃないかと思った。


「光が弱い・・・?」

「弱い・・・というより小さいんだ・・・いや・・・欠けていると言ったほうが適切かもしれん・・・」

「欠けてる・・・」


もう泣けたらどれだけ楽なんだろう。惨めだ。イノセンスと適合したら、弱い自分を変えられると思ったのに。さくらなんてすぐに追い越せると思ってたのに。

勝手に強くなると思い込んでた。なんて惨めなんだ。


「私、出来損ないの使徒・・・なのかな。」

「やなぎ・・・」

「もう、これ以上強くならないのかな・・・」

「やなぎ・・・お前は神に選ばれた大事な使徒だ・・・出来損ないなんかじゃない・・・」


神様なんか。


神様なんか・・・・・



「ありがとう。ヘブラスカ、帰るね。」


ヘブラスカの顔を見ることなく走り出した。

長い長い廊下を走る。吐き出した息は白く濁ってすぐに消える。こんなに長い廊下だったっけ?


「神様なんてっ・・・ガハッ」


言い終わらないうちにむせかえった。呼吸が苦しい。走ることもままならなくなりスピードを落としていき、ついに止まってしまった。息はまだ荒い。冷たい石の壁に手を添えてしゃがみこむ。


会いたい。

会いたい。



―――やなぎ



「アレンッ・・・・」




アレンに会いたいよ。



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