05.平行線




夜になって僕らは夕食を食べた(神田は来なかった)。しばらく会えなくなるから、とみんな心のどこかで思っていたのかもしれない。今夜は特別長かった。やなぎなんてホットココアを3杯もおかわりした。

みんなと別れた後、僕はお風呂に入った。約束したわけじゃないけれど、今夜はやなぎと一緒にいようと思っていた。勿論、明日やなぎを起こさなきゃいけないというのを口実に。

任務に備えて早く寝るのがいちばん良いのだけど・・・そりゃあ、僕達付き合ってるし、僕も男だし、好きな子とはイチャイチャしたいし。問題なし!と悶々とした思考を断ち切った。もう部屋にいるだろうと思い、僕は濡れた髪をタオルで拭きつつやなぎの部屋の前に立つ。今日はちゃんとノックもする。

が、返事はない。

もう寝たのだろうか、薄情な奴だ。しばらく会えなくなるっていうのに。しょうがないからまた勝手に入ることにした。大体鍵をかけないやなぎが悪い。

「やなぎ〜?」

一応控えめに名前を呼んだ。しかしやはり返事はない。というかこの部屋の中に気配がない。この前の月夜といい、またやなぎはいない。

口からため息。しょうがないから僕は部屋に戻ることにする、彼女を探すにはもう一枚何かを着る必要がありそうだ。


――――――


やなぎはパタパタと静かな廊下を走る。向かう先は、

「こんばんは。ヘブラスカ。」

「久しぶりだな・・・やなぎ・・・またはかりに来たのか・・・・」

「うん。任務の前にやっておきたくて。お願いしていい?」

「ああ・・・」


ヘブラスカから白い触手が伸びる。イノセンスとのシンクロ率をはかってもらうのだ。なんか少し冷たい感じ。やなぎは静かに目を閉じる。額と額が合わされば、それが始まった合図だ。


「2%・・・・15%・・・」

いけ、いけ・・・。

「23・・・41・・・46・・・・」


もしかしたら初めて50%を超えるかもしれない、やなぎは下唇を噛んで集中する。


「・・・・・50%!」

額から光が消えた。測定が終わったのだ。

「今のシンクロ率は・・・50%だ・・・・」


50か・・・、やなぎは嬉しそうな、でも悲しそうな声で呟いてうつむいた。


「最高値だろう・・・嬉しくないのか・・・・?」

「え?いや・・・やっと半分か、と思って。」

「焦ることはない・・・こうして上がってきている・・・」

「私、早くシンクロ率を上げたいの。じゃないと、」


みんなに追いつけないよ・・・


いつまでもお荷物のままじゃいられないんだ。



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