02.僕らの日々




「はれ?やなぎ、なんでマフラーしてんさ?」

「冷え症だもん。」

「いや、お前先週雪の中セーター1枚で走り回ってただろ。」

「・・・か、風邪ひいちゃってね。」

「やなぎは馬鹿だから風邪なんかひきませんよ。」

「誰のせいだこんにゃろっ」

「へ?アレンのせい?」

「へっ!?いや!なんでもないよラビ君!」

「???」


?を浮かべたような顔をするラビを必死でごまかしているやなぎ。あの月夜の翌日、僕らは朝食を食べるべく食堂にいた。

勿論、やなぎは昨日僕がつけた首筋のアレを隠すためにマフラーをまいている。そのまま歩けって言ったのに・・・。そう呟くとやなぎがキーキー騒ぎ出す。


「もうやなぎ!朝からうるさいわよっ」

「目障りな奴だ。」


やなぎの声を聞いたリナリーや神田が僕らの所にやってくる。(まあ神田は大抵僕以外の誰かが引っ張ってくるのだけど。)そして僕らは朝食を食べるのだ。任務で全員揃わない時も少なくないが、ここ3日間は珍しく5人が揃っている。そんな感じだった。

でもそれも今日でまたしばらくはお別れ。みんな分かっているから余計に、ということもあるかもしれない。


「今日でまたしばらく5人揃わなくなっちゃうわね。」

「そうさね〜。」


各々が自分の朝食を持って席にすわる。リナリーはフレンチトースト、ラビはサラダ(なんか、兎みたい)、神田は・・・で、やなぎはご飯とお味噌汁、そして僕は・・・まあ以下省略。


「私も明日から任務だし、アレン君とラビ二人だけになっちゃうわね。」

「え〜。」

「なんさ、アレンその嫌そうな顔。」

「べつに〜」


僕はラビを軽くあしらいながら目前に山とつまれたれ大量の朝食を片付けにかかる。そういった光景をリナリーとお喋りしつつ、笑顔で見ているのがやなぎだった。


「やなぎと神田は明日から一緒の任務なのよね?」

「そだよ〜」

「今回はイノセンスの回収?」

「ん〜、確信はないらしいよ。ただアクマが大量発生してるだけかもしれないし。それにね、」

「ん?なんさ、」

「そこに私のお姉ちゃんが住んでるんだ。」


もう早く行きたい!と笑った時の目尻が嬉しさを物語っている。僕もやなぎと付き合ってからしばらくして聞いたことだが、彼女がその姉の話をすることは滅多になかった。彼女いわくホームシックになるらしい。


「そんな話初めて聞いたわよ。」

「なんで黙ってたんさ、やなぎ〜」

「へへ、ごめんね。あんまり話す機会がなかったから。」

「で、どんな人なの?」


リナリーもラビも興味津々だ。神田は・・・蕎麦に夢中だが、それなりに興味を示している感じがした。


「お姉ちゃんはね、さくらっていうんだけど、すごく真面目な人で綺麗で、料理が上手くて・・・」

「なんか、やなぎとは大違いさね。」

「あれですね、片方がよくできてるともう片方はチャランポラン」

「「「あ〜。」」」

「みんな納得しちゃうの!?神田も!」

「かわいそうに。」

「何その憐れみの目!一応双子なんだからね!」


やなぎと僕以外の三人が食べるのをやめてやなぎに目を向けた。


「まじ!?」

「双子なのね、」

「尚更かわいそうですよね。」

「どういう意味?」

「さくらさんに優性遺伝子がすべていってしまったんですね。」

「私が近年稀にみる劣勢遺伝子ですか。」

「純系です。」

「ざけんなっ!」


ガシャーン!と皿が音をたてた。また少しいじりすぎてしまった。そう、僕らは毎日こんな感じだ。でも退屈なんかでは全然ないのだ。

同じようで違う。まぶたを落とした刹那、また空を見上げた時に同じ空が見えないように、花の色が瞬目に移り変わるように。全く同じ瞬間なんてないのだ。


今の僕らのように。



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