群青と橙色
「ほんっとにお前は・・・。」
指導室にて、
例の放課後がやってきた。気がおかしくなりそうだ。さっきから同じことを何回も繰り返している。
「ったくよ〜、俺は忙しいんだよ。」
「・・・・・。」
「お前を指導するためにどれだけの時間無駄にしてると思ってんだよ。」
「・・・・・。」
「ああ?何とか言えよ。」
同じ言葉を繰り返すなら早く終わらせればいい。地毛だって言ってるのに。私はこの教師のはけ口になっている。悔しいから何も言わない。表情だって変えない。揺らぐもんか。そう言い聞かせて唇に力を入れる。
――心が許せなくて笑えないなら、心を許さずに笑えばいい。
アレンは私に言った。すごく悲しかった。自分とどこか似てる。でも彼が背負ってるのは、きっともっと重いものだ。
世の中をうまく生きる方法、と言っても私はこの教師とよろしくするつもりは微塵もない。時が過ぎるのを待てばアイツも飽きるはず。我慢。
「・・・おい。」
しまった。完全に他のことを考えていた。せめて聞いてる素振りだけでも装えばよかった。
「聞いてんのか。」
「・・・・・。」
ガシャンッ
私の目は少しだけ見開いた。辻井が出席簿を床にたたきつけた音だった。
やばい、これは・・・
「お前みたいなどうしようもない奴を調教するのも俺の仕事だよ。」
背筋に寒気が走った。
振り上げられた手が私の頬に振り落とされ・・・。
・・・てない。
「辻井ちゃーん。これ提出しにきたさ〜」
「・・・・・ラビか。」
橙色の髪をした青年の後ろ姿を見ている。青年が右手で掴んでいるのは辻井の、振り上げられた右手。
ヘラヘラと笑う“ラビ”は私の方をチラッと振り返って微笑んだ。
「・・・手を離せラビ。」
「あ、ごめんさ。」
「俺は仕事があるから戻る。」
青年越しに辻井が睨んだ。負けじとばかりに睨み返してやった。辻井は舌打ちをして指導室から出て行った。
やっと終わった。大きなため息が漏れた。やってらんない。私は頭を乱暴にかいた。ふと、青年とバチリと目が合った。青年は何かピーンときたような顔をした。
「あんた、もしかして大宮葵?」
「え?」
「亜麻色の髪に青色の目、だろ?ああ、アレンは群青色だって言ってたな。」
「・・・アレンを知ってるの?」
「仲いいんさ俺ら。アレンが最近お前のことよく話すからどんな奴なんか気になってたんさ〜」
ヘラッと笑う彼の笑顔もどこか掴み所がなくて、アレンを思い出した。
「俺はラビ。ラビって呼んでくれていいから。」
やっぱり彼はヘラッと笑った。
私は・・・・・
――心を許さずに、
アレン、私やっぱり上手く笑えないみたい。庇ってくれて嬉しいのに。仲良くなりたいのに。
「・・・よろしく。」
目をそらしてしまう
どうしたらいいかな。
―――――――
辻井先生の扱い(笑)
はい、勉強不足です。
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