音もなく、ゆっくりとアレンの顔が近づいてきて固まった。目をつむればいいものを、私は止めるはずもない彼の動きを制止しようと声を出す。
「ア、アレン!待って!!」
「なんですか?」
いつもは絶対にやめてなんかくれないのに、今日はどういうわけか、その動きはピタリと静止した。
でもちょっと待って。何もそのまま待たなくたっていいじゃない。ちょっと離れて待ってくれてもいいじゃない。
なんでそのままの距離で
目と鼻の先で
「ア、アレン近い」
「待ってくれって言ったのは君じゃないですか」
「そうだけどさ、」
喋ればお互いの息がかかる距離。話すことさえ恥ずかしくなってだんだんと口ごもる。そんな私を見て、アレンは楽しそうに笑う。
「いい加減、僕にやめる気がないことくらい分かるでしょう?」
私の横髪を弄んで囁く。
「それとも、
嫌がる方が、僕にとって効果的だって分かった上でやってるんですか?」
「そんなこと、ない」
でも、私は嫌がってもアレンが止めないことを知ってる。
なんで、私は止めたんだろう
「ねえ」
「本当は、本気でやめてほしいなんて思ったことないよね」
確信の口調。
そうだよ、
私だって分かってるよ。
それくらい
「アレンのばか」
「僕、好きな子ほどいじめたいって思っちゃうんですよね」
そう言って笑って、私に優しくキスをする。
次もきっと、私は嫌がる素振りを見せるんだろう。
目と鼻の先で
―――――――
なんかアレンさんきもくね?大丈夫ですかねコレ。
ひたすら夜の勢い。
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