>> 12月25日
「ハッピーバースデー!」
その声と同時に、パンッというクラッカーの音、火薬のにおいがした。そして当の先輩は目を見開いて数秒静止した後、ふわっと笑って「ありがとう」と言ってくれた。
良かった、喜んでくれた!私が喜んでいるのが顔に出ていたのか、隣にいた先生は私に良かったなと言った。ふふ、と先生に向かって笑うと、先生は私の背丈に合わせてかがみ、耳打ちをした。
「プレゼントは私、な」
「なっ!?」
顔に血が上っていくのが分かる。先生はニヤニヤ。この人仮にも先生だろうに、何てこと言うんだ。
「そんなことよりもっ」
「先輩っ?」
いつの間にか背後には先輩がいて、私と先生の間に割って入ってきた。よいしょ、と座った先輩との距離が近い。ちょっと動くと肩が当たってしまいそうだ。先輩を見ると怖いくらいニコニコしている。
「先生はどうしてここに?」
「みんなひどくね?俺がここにいちゃだめなの?」
「呼んでないです」
「俺も少年のことお祝いしたくてさあ」
「どうだか」
どうしてか先輩は先生のことを良く思っていないようで、いつもこうなる。ラビ先輩とロードはそれを見てニヤニヤしている。そんな時、先輩に隠れて見えなくなった先生がひょっこり顔をだして私に言う。
「あ、葵ちゃん」
「なんですか?」
「ほら、少年に渡すものがあるでしょ」
先輩は怖いニコニコを止めて、私の方に向き直り「プレゼント?」と目を輝かせた。い、いきなりこの展開!?目線だけを先生にやれば、先生は顎でGOサインを出してくる。
「プップレゼントは!」
「うん?」
「わ!」
「わ?」
「わ、わたしっ」
「ワタシッ!?」
「私達で作ったケーキです!」
私が隠していたケーキを先輩にズイッと渡す、が反応はない。あ、あれ?なんかデジャヴ。恐る恐る先輩の顔を覗き見ると。何故か先輩の顔が赤かった。ロードとラビ先輩は大爆笑。先生は何かを堪えるように壁を拳骨でベシベシ叩いていた。
え、私何かした?
「葵ちゃんって本当おもしろいわあ。な、少年?」
「そうですか?」
先輩はまた怖いニコニコに戻って先生に微笑みかける。
「私何かマズいことしましたか?」
リナリー先輩にそっと聞いてみると、リナリー先輩はふふっと笑って何も教えてくれなかった。