>> 夜は酣

「せんぱい・・・」


そう言ってまひるちゃんがアレンのワイシャツの裾を掴んだのには驚いた。頬はほんのり赤らみ、なぜかうるうるした瞳。何かがおかしい。

「はいっ!?」
突然の出来事に動揺しているアレンの横で俺は辺りを見回した。


そして気付いてしまった。
まひるちゃんの横に置いてある空のコップに。じじいが酒の入ったコップを置いてトイレに行ってしまっていたことに。


つまり・・・



「じじいのバカーッ!」
まひるちゃんは酔っ払ってしまったわけだ。



―夜は酣



もともと今日は俺んちで晩飯をふるまうという趣旨の集まりだ。それで今説明した通りまひるちゃんがじじいの酒を間違えて飲んでしまったわけだけど、

「せんぱーい」
完全に酔いが回ったまひるちゃんがフニャフニャした笑顔でアレンに抱き付いた。

「ちょ・・・まひるちゃん?」
「なんですかあ?」
「酔ってます?」
「違います。これは酔ってる演技をしてるんですー」

役者なんですー。と彼女は自慢げに話すが全く意味が分からない。まず、舌っ足らずな言葉が完全に酔っ払いのそれだ。なるほど、まひるちゃんは酔っ払うと絡み癖が出るんさね。要チェック事項・・・と二人を見ていると、赤面したアレンが目で俺に助けを求めてくる。


「本当は嬉しいくせに」
「ちょっ!そんなこと言ってないで助けてくださいよラビ!」
「助けろっつっても・・・」
「ラビ・・・お願いします」


これ以上は僕もいろいろ危ないんです・・・



抱きついてるまひるちゃんの目を天井を見上げて見ないようにしているアレンの呟きが切実すぎてかわいそうになった。


しゃーないな。


「おーい、まひるちゃーん」
「あ、ラビせんぱーい」
「アレンより、俺といちゃいちゃしようさ」
「どういう助け方!?」


あまり期待せずにやったことなのに、いいよ、の返事のかわりかニッコリと笑った。不覚にも少しドキリとしたのは内緒。

でもやっぱりアレンは黙っちゃいなかった。


「だ、ダメです!」
アレンから離れようとしたまひるちゃんを渡すもんかと抱きしめる。

「助けろって言ったじゃん」
「そんなやり方は望んでません!」
「でもお前やばいんじゃないの?」
「ラビといちゃいちゃされるくらいなら断然こっちの方ががましです」


それをシラフなまひるちゃんにとっとと言ってやれよ。と内心思う。


「せんぱい、私のことどう思ってるんですか・・・?」
「はいっ!?」

一瞬、いつものまひるちゃんに戻ったのかと錯覚するくらいにはっきりと喋った。

「ラビ先輩と仲良くするのは嫌なんですか・・・?」
「いや、僕は」



「わたしは、先輩のこと・・・」





「・・・・・え?」
「寝オチさね」


アレンは静かに寝息をたてるまひるちゃんを確認して、肩で大きく息を吐いた。それは安心のため息だったのか、それとも・・・



夜は酣


―――――――

里美さんの「檸檬愛玉の主人公が酔っ払ってアレンさんに絡む」というなんともおいしいリクエストだったんですが、すいません力不足です(;O;)
これに懲りずにまた遊びにきていただけたら嬉しいです。リクエストありがとうございました!



20110806



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