>> 欠陥品と愛情
「30円のお釣りでございます」
笑顔でハキハキとした受け答え。おっと、手を差し出されたらそこにお釣りを直接お渡しするのが礼儀。ワタクシ、今日も元気にバイトをこなしておりま・・・・
す?
「ねえ君さ、今日いつバイト終わるの?」
いつのまにかお釣りを渡した手を握られ、目の前のお兄さんがニコニコと笑っていた。
「えーと・・・」
「この後遊ばない?」
「いや、それはちょっと」
「ちょっとだけ!」
「あの、本当に私」
「ふがっ」
お兄さんの額にDVDの空箱がクリティカルヒットした。後ろから物凄い殺気を感じます店長。
「すいませんお客様。こちら大変な欠陥品でございます」
「おいこら」
「なので速やかにお帰りください」
ニッコリと笑う歯のきらめきが世界一胡散臭い。それが私の彼氏だったりする。
―欠陥品と愛情
「有り得ません」
「なにが」
「なんでこんなちんちくりんがモテてるんですか」
「え、ひどくない?」
バイト後駅前のファーストフード店でアレンとご飯を食べていた。
「納得できませんね」
アレンが信じられないというような目で私を見ながら飲んでいたジュースのストローを噛む。私も負けじとアレンを睨み返す。
「みんなこんなののどこがいいのか。物好きも大概にして欲しいですね」
「いや、君もその物好きの一人だよアレンさん」
「欠陥だらけですよ?」
「胸をさすな、胸を」
「・・・はあ」
いやいや、確かにね。確かに私は欠陥だらけですよ。だけどさアレンさん
「私たち一応付き合ってるんだよね?」
「もはや事故です」
一瞬本気であのお兄さんに乗りかえてやろうかと悩んだ今日この頃。
―――――――
今日はアレンとシフトがかぶっていなかった。あのファーストフード店の一件から一度も会っていない(といっても二日間だけど)。どうせ私は事故ですよーとふてくされている。
「あんな奴知らないっ」とCDを抱えて立ち上がるやいなや足がよろめきCDを床にバラまいた。うわ、最悪。これじゃあ本当に欠陥品だな。私はため息の後ゆっくりとしゃがんでCDを拾おうとした。
が、その前に私のではない誰かの手がCDを拾い上げ私に差し出した。
「大丈夫?」
見覚えのある顔だった。
「この間の」
「そうそう!覚えててくれたんだ」
例のこの間のお兄さんが柔らかい笑顔を浮かべた。私は差し出されたCDを受け取ると、警戒するように一歩後ろへさがった。するとお兄さんは少し苦笑いをした。
「ごめんね。この間はちょっとやりすぎた」
「はあ」
「今日はあの時DVD投げてきた白髪君はいないの?」
「まあ」
「あの人、彼氏?」
「・・・多分」
「ははっ多分って」
なにそれ、とお兄さんは笑う。そして真面目な顔をして私に言った。
「俺さ、結構本気なんだ」
目線が絡み合う。
「俺にしない?」
「悪いんですけど」
いるはずのないアイツにグイッと肩を寄せられた。
「ア、アレン!?」
私は全く状況が飲み込めなかった。それは目の前のお兄さんも同じで、肩で息をするアレンだけが喋り続ける。
「まひるは僕のなんで」
私の肩を引き寄せる力を強めてお兄さんを睨む。
「彼女のこと欠陥品って言ってたじゃん」
お兄さんはからかうようにアレンに言った。
「確かに仕事の覚えは遅いし、早とちりだし、CDバラまくし、ペチャパイだし欠陥だらけですけど!」
おい、ただの悪口だろそれ
「欠陥すら可愛くてしょうがないんですよ」
お兄さんごめんなさい。
やっぱり私、アレンしかいないや。そう思った今日この頃。
欠陥品と愛情
やっぱり好き!
――――――
なつみさんへ!
焦燥クランベリーの番外編ということで書かせていただいたんですが、あれ全然ラブラブしてないじゃん!と。あわわわ、大丈夫ですかね?
なつみさん、リクエストありがとうございました\(^o^)/
20110715
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