>> 27.焦燥クランベリー

「はい、どうぞ」
アレンが温かいココアを差し出した。「ありがとう」とお礼を言って受け取るけれど、どうも落ち着かない。
アレンの家。

「来るの、二回目ですね」
「そだね」
「ココア美味しい?」
「うん、美味しい。
ていうかさ、アレンさん」
「なんですか?」
「距離、近くね?」
「そうですか?」

いやだってね、いわゆる抱っこ状態ですから。アレンの部屋とか余裕で八畳あるのに全然活用できてないからね!一畳でおつりくるからね!そりゃ、落ち着かないよね、納得!

「ちょ、トイレ!」
「だーめ」
「えぇぇ」

腕の力をさらに強めるアレンさん。ちょ、まじでやばい。心臓と膀胱がダブルでやばい。

「アレン、一回離そう!」
「やですってば」
「どうして!」
「だって、ずっと僕我慢してたんですよ。ずっとこうしたかった」

「アレン・・・・・」
「ひかり・・・・・」


アレンの唇が私の首筋に落ちた。


「んぎゃああぁぁ!!」
「えぇぇぇえぇ」


ビタンッ
「ぐはっ」

びっくりしすぎた私は床を転がり壁に激突した。
な、何今の!?



「やりすぎましたって。そんな怯えた小動物みたいな目で僕を見ないで下さい」
「・・・・・」
「怖かった?」
「・・・びっくりした」
「ごめんね」

今、絶対に大人な世界に片足突っ込んだ。アレンは好きだけど、あれはまだ少し抵抗が・・・

「隣座ってい?」
「どうぞ」

アレンがゆっくり隣に座る。肩と肩がちょんっと触れる。

「ひかり、もう一回ちゃんと言います。僕はひかりのことが好きです。
ひかり・・・は、好き?」

不安げにアレンの瞳が揺れる。今までの私の空回りがアレンを不安にさせてると思うと、すごく申し訳なかった。

「私も好き、だよ」

抵抗はあるけど、アレンの隣に居られることは純粋にすごく嬉しいんだよ。

「僕の彼女になってくれますか?」


「うん」

アレンは微笑むとそのまま私の口にそっとキスをした。


「怖くなかった?」
「これは大丈夫」
むしろ嬉しいよ。

「じゃあこれは?」
「んぎゃああぁぁ!!」
「チッ だめか」
「今舌打ちしたよね?」
「僕なりに配慮したんです」

どう配慮して胸に手が行ったのか教えて欲しい。
「まあ、」アレンは私のおでこに自分のおでこを合わせて言った。
「ちょっとずつ慣らしてこう?」
「うん」
「時間はたっぷりありますからね」


アレンは笑って言ったけど、やっぱり少し残念そう。ごめんね、アレンが嫌いなわけじゃないんだよ。すっごく好きなんだよ。どうしたらアレンに全部伝わるのかな?

なんか、あれこれ考えるのめんどくさいな。


「アレンッ」
「なんですか・・・・んっ」

やっぱり行動で伝えるのがいちばんかなと思ってキスしてしまった。

「大好き!」
出血大サービスで抱きついてみる。伝われ、私の気持ち。


「・・・・ひかり」
「なあに」
「・・・・・焦れる」
「はい?」
「ムラムラする」
「ちょ、待っ「冗談ですって」


そう笑ったアレンの顔にさっきまでの残念そうな感じはすっかり消えていた。

言葉にできない想い。
嬉しさ、楽しさ、苦しみ、辛さ、不安、それ以外にも無数にあるたくさんの想い。私達はそれを上手く言葉にできなくて、もどかしくて、歯がゆい。それ故に時にはすれ違って涙する。
でも、無理に言葉にする必要なんてきっとなくて。私達はそのために抱き締める腕を持っている。

何度だって抱き締める。
何度だって私を焦らし、甘酸っぱい気持ちにさせる。


焦燥クランベリー
その手には温もり



――――――

お、終わった!
あとがき書きます。

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