>> 26.青天の霹靂

走っている。
景色がすごい速さで過ぎていく。私、鈍いから一発殴られないと自分の気持ちに気づけなかった。何も聞かずに逃げ帰った私を思いっきりはり倒したい。次から次へと溢れてくる涙も気にしない。今考えてることは一つ。
アレンに会いたい

横断歩道を渡ろうとした瞬間、点滅していた青信号が赤になった。次々に自動車やトラックが眼前を通り過ぎていき、視界を遮った。もうすぐそこなのに。息が切れて肩で息をする。
一瞬自動車やトラックの往来に隙間ができた。いつも通るまっすぐな道が広がり、見慣れた一人の後姿。

――あれは、


「アレンッ」


思うより早く体が動いていた。移るのは驚いて目を見開いたアレンの顔と
「危ないっ」


響くクラクション




「いたたたた」
「なあにがいたたたたですか!死にたいんですかこのバカひかり!」

アレンは怒鳴るが、私はイマイチ状況を把握できていない。
とりあえず状況を判断すると、アレン見つける→走り出した恋は止まらない☆→あ、赤信号だった、てへっという流れだろう。
アレンは道路に飛び出した私を間一髪で助けてくれたらしい。そして今アレンに抱き締められたまま地面にへたり込んでいる。

「ごめん」
まだ息が切れているアレンに謝る。返答がないので恐る恐る顔を上げると、アレンは眉を下げ悲しそうな顔をしていた。私を見て一瞬睨んだかと思うと、また元の悲しそうな顔に戻って私の耳元に顔をうずめた。

「もう、一体なんなんですか君は。
手が届きそうになったら逃げるし、抱き締めたら泣くし、人が落ち込めば走って突っ込んでくるし」
僕にどうしろって言うんですか。


「アレン、」

言わなきゃ、言わなきゃ。

「私も、自分で自分がよく分かんない。
でも聞いて。私、本当は他の人と映画観てほしいなんて思ってない。また誘ってくれたのが死ぬほど嬉しかった。」

嗚咽が混じるぐちゃぐちゃな言葉、上手く言葉にならない。思ってることがそのままアレンに伝わればいいのに。

「ア、アレンが他の人のこと好きでも、私っ私、

アレンのこと好き」



「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・僕「ストップ!」・・・なんですか」
「みなまで言うな!」
「はあ?」
「振られる覚悟はできている!」
「いや、ちょっと待「それじゃ!」待てコラ」
「むぎゃっ」

走って立ち去ろうとしたら(いわゆる言い逃げ?)全力でアレンに阻止された。おかげで私は道路に顔から突っ込んだ。


「僕も好きだって言ってんでしょうが」


「・・・・・あれ?」
「何か問題でも?」

え?だって、だってアレンの好きな人ってあの電話の、

「リナリーじゃないの?」

「違います」
「えぇぇえ!?」



*****

「あははははっ」
「もう嫌だこんな珍獣!」
「やっぱ最高さね、ひかりのバカ加減は」


有り得ない。


「つまり、私一人でから回っていたと?」
「「「うん」」」


有り得ない。


「じゃあ、あの時アレン告ろうとしてたの?」
「そうですよ。どっかの誰かさんは泣いて逃げましたけどね」
「いや、だってリナリーちゃんから」
「分かります?人が勇気振り絞って抱き締めたのに、相手に泣かれて逃げられた僕の気持ち」
「う・・・・」
「流石の僕もへこみましたね」
「まあ俺らはひかり見てるの面白かったよな?ユウ」
「バカ丸出しだったな」
「そりゃあ何も知らない私を見るのは、さぞかし愉快だったでしょうよ、
ていうか、なんでラビと神田がいるの?」
「見慣れた二人が抱き合ってたから駆けつけただけさ」
「見るな!」
「道の真ん中で抱き合う方が悪いんさ」
「う・・・」


どうやら私は取り返しのつかないくらい恥ずかしいことをしてしまったらしい。


「良かったな、自分の気持ちに素直になれて!」
「死ねラビ」
「ひっど!」


「アレンもニヤニヤしすぎじゃない?」
「『私アレンのこと好きっ(裏声)』」
「前言撤回!」
「できないくせに」
「う・・・・」

笑う野郎三人


「もう散れ!解散!」
怒鳴る女一人



青天の霹靂
あれ、こんなオチ?

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