>> 23.理解不能

ふとした瞬間に、少し前(と言っても1年前くらい)の記憶が蘇った。まぶたを閉じればまだ色濃く残っているものもある。

その時好きな人がいた。
入学して間もない時に委員会でとてもお世話になった先輩だった。一時は私の自惚れとかではなくて、本当に付き合いそうな勢いだった。そこまで至らなかったのは先輩に彼女ができたから。可愛い女の人だった。

バイト帰りの夜道を歩いていた私のため息は、きっと気温を一度下げてしまうくらい寂しかったと思う。自分を卑下せずにはいられない。
昔から人並みに恋愛をしたと思う。でも一度も気持ちをぶつけたことがない。憧れて、焦がれて、何もないまま消えていく。その繰り返しだった。そしてそれをまた繰り返そうとしている。実際、そうしたほうがはるかに楽なのだ。適当な理由をつけて、見たくない物から目を逸らす。

信号が赤になった。私は歩くのを止めて空を見上げた。雲が月に薄くかかっていて、ちょうど今の私みたいだった。


*****


野菜ジュースの紙パックにさしたストローを噛んだ。さっきから私を見てはニヤニヤニヤニヤ。「きもいよラビ」机に頬杖をつきながら私を見るラビを一瞥して、メロンパンにかじりついた。

「ひかりとアレンがまさかそんな関係になってるなんて思わなかったさ」
「ラビが勝手に勘違いしてるだけだからね」
「でも行ったじゃん」
「だーかーらぁ」
「普通どうでもいい奴を家にあげないだろ」

畳みかけるように話す。一体何が言いたいんだラビは。

「早くくっつけ」
「絶対ない」
「なんでさ」
「アレンには好きな人いるもん」

なんかイライラしてきた。

「だれ情報?」
「本人情報」

メロンパンが半分になった頃にポッケのケータイが震えた。ディスプレイを見れば話題の彼。メールが来たのだ。ラビは「誰?」と尋ねてきた。答える義務もないし、彼の反応も想像できたけど、「アレンだよ」と答える。

「お前らいつの間にメアド交換したんさ」
「この前遊んだとき」
「お前ら遊んだの!?」
「え、映画観ただけだよ?」
「お前、それってさ」
「意味分かんないよね」

私を誘わずに好きな子と映画行けって話じゃね?どんだけシャイなんだよ。

「いや、ちがくてさ。
・・・ひかり、なんか思うことないの?」
「私が?何を?」

ラビがわざとらしいため息をついた。なんだ、失礼な。ため息つきたいのはこっちだばかやろう。

「アレンが可哀想さ」
「はあ?」
「もういいさ。
じゃあさ、アレンに好きな子がいるとしてひかりはどうすんの?」
「どうするって・・・」
「好きなんだろ?」
「えぇ!?」

誰にも言ってないのに!

「これで気付かない方がおかしいさ。で、どうすんの?」

ラビが私に詰め寄る。こういうことには人一倍聡いよな、この人。

「諦めるしか・・・」
そうするしかないじゃん。
まだ間に合うもん。


「なあ、ユウも何か言ってやれよ」
「え?神田いつからいたの」
「最初からいたさ」

バチッと目が合う。あれ、なんか怖いな。すごく不機嫌に見えます神田さん。

「神田?」
「・・・・・チッ」
「え?
えぇ!出てくの?いつキレたの?神田ぁ!」

ピシャン

「ユウも重症さね〜」
「神田どうしたの?」
「・・・お前がいちばん厄介だな、うん」


ラビが一人でうんうん頷いている。私は何も分からない。なんでアレンが可哀想なの?なんで神田はキレてんの?

なんで私はイライラしてるんだろう?


理解不能
もっと分かりやすく言ってよ



――――――
たぶん、これからつじつまが合わなくなってきます← 自分でも何書いてるか分かりません(爆)

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