>> 16.未知なるは、 夕方6時、少しずつ日が長くなってきた。それでもやっぱり夜風は冷たくて最寄り駅まで顔をマフラーにうずめて歩いた。 店長に渡された紙に書かれた住所は私の知らない町だった。ここから駅で3駅。おそらくラビの地元でもあるんだろう。私は券売機で往復分の切符を買い、小走りで発車寸前の電車に乗った。 「あ、両想い切符」 ふと見た切符の発券番号は‘3523’だった。両想い切符とは4桁の数字の端の数字が同じだった時に成立する、恋が実る確率。いわゆるジンクスだ。 「52%って微妙・・・」 無意識に近い呟きだった。その途端に電車はカーブに差し掛かり車体が傾いた。グラリと傾いた私の体。その拍子に手から切符がヒラヒラと落ちて床に落ちた。 私はふらつかないように手すりに掴まりゆっくり切符に触れた。 その瞬間に、気付いてしまった。 私はあの時アレンのことを思った。両想い切符を見て、微妙だと思った。私の中でアイツはただのバイト君で、意地悪なやつで。 アレンは、アレンは・・・ 会いたいとか、話したいとか、そんな・・・ 私はアレンが好き? 『まもなくー、大高ー、大高ー、お降りの方は―』 ハッと我にかえり、切符を拾いゆっくりと立ち上がった。そして壁に寄りかかり窓の外の夕日を見た。橙色、黄色、そして水色、藍色、と空が何重もの層になっていた。夜がもうすぐそこまで来ている。窓の景色は全く知らない町並みだった。まるで未知の世界に行くみたいだ。 不安になると変なことを考える。きっとそうだ。きっと、あの時浮かんだアレンに深い意味はないんだ。 これ以上考えが変な方へ行かないように、今日のご飯をひたすら考えた。 未知なるは、 彼の住む町、私の気持ち prev//next back |