>> 13.ワンダーボーイ 本当はちょっとだけ奴の姿を見てさっさと帰ろうと思ってた。が、その思惑は俺の中の何かに焼き消された。自分でもよく分からない。なんというか、もう条件反射みたいなものなのだ。 そう、ひかりは昔から静かになったと思ったら泣いていた。理由は様々。近所のガキ大将にいじめられた、だの買ったばかりのワンピースを汚した、だの。そして泣いては俺の所に来た。無論、俺は大迷惑なので即行で元凶を潰しに行くのだった。 今回もきっとその延長線上だろう。もう好き、とかそういうのではなくて反射だ。うん、そうだ。 店内に最近流行っているアイドルグループの新曲が流れる。白髪モヤシは手際よくCDたちが入っていたカゴを集め、重ねてよいしょ、と持ち上げた。そして、さてと・・・と一呼吸おいた後に貼り付けたような笑顔をこちらに向けた。 「はじめまして。神田、っていう名前でしたよね?」 「どうも。」 「僕はアレン・ウォーカーといいます。」 よろしく、とニコッと笑うが目が全然笑ってない。絶対よろしくする気なんてないだろ。 「・・・オイ、モヤシ。」 「僕の自己紹介聞いてました?アレンです。」 「ひかりが・・・バイト行きたくねえって言ってんのはお前のせいだろ。」 「木村さんが?」 「お前がアイツのことどう思ってるか知らねえけど、大概にしといた方がいいぜ。」 モヤシが目をパチパチさせて俺を見ている。 「あの、神田・・・」 「・・・んだよ。」 「ひかりのこと、好きなんですか?」 「あ゛ぁ?」 違ぇよ、と全力で否定する。どいつもこいつも何なんだ。俺はアイツがギャーギャーうるさいから迷惑なだけだ。 「・・・とにかく、アイツにあんまりちょっかいだすな。」 「・・・・・。」 不服そうな顔で見る。負けじと睨む。バチバチと火花が散る。モヤシからはさっきの笑顔は消えていた。 「お前ら、何してんさ?」 「あ、ラビ。」 「もう2人とも仲良くなったんさ?っておいユウ!どこ行くんさ!」 「俺は帰る。」 「ちょ、おいユーウ!」 「・・・帰っちゃいましたね。」 「・・・いつものことさ。」 ラビは頭をかいて階段を見つめていた。 呆 然 一方、休憩室。 (アレン、来ない・・・。) prev//next back |