>> 12.いざ、出陣。

「それにしても、ユウが一緒に来るとは思わんかったさ〜」

意外さね〜、と言いながらずずっと俺の顔を覗き込んだラビ。目がにやついている。そのまま歩いてドブにはまりやがれ馬鹿兎。

「・・・なんだよ。」

「いや〜、ユウいつもひかりのこと邪険に扱っるけどさあ。なんだかんだ言ってひかりが心配なんだろ?」

「あ゛ぁ!?」

「お?予想以上の反応。俺は幼なじみとして大切なんかなあと思ってたんだけど。」

「馴染んでねえよ。」

「もしかして、違う方だった?」

「違う方だあ?」

「好きってこと。」


幼なじみ?それとも、違う方?好き?ハッ 違うも何も最初からそんなゴチャゴチャしたような煩わしい感情なんてアイツに持ったことねえんだよ。そんな感情・・・


「・・・ユ、ユウさん?」

「・・・・・。」

「ユーウくーん!!!」

「!!・・・・んだよ。」

「ユウ、今何考えてたんさ?」

「知るか。とっとと見て帰るぞめんどくせえ。」

俺は奴のどうでもよすぎる詮索を避けるようにひかりのバイト先に足を踏み入れた。



*****


「ラビ、と神田?」

ひかりのアホみたいな営業スマイルは俺らを見て一気に萎えた。それって店員としてどうなんだ。

「え、何。もう帰ればいいのに。」

フイッと目をそらしたひかりの顔が少しだけ赤かった。どうやら恥ずかしいらしい。

ラビがひかりと喋ってる間にも俺は例の奴を探してみる。


「おかしいですね。N高で木村さんの指導員は僕ですけど、鬼みたいな指導員はいないですね。木村さん誰のこと言ってるんですか?」

誰のことですか?とものすごい笑顔で質問しているが、すぐにコイツがひかりの言う鬼だと分かった。後ろに般若が見える。間違いない。

どうやらあの馬鹿兎は墓穴を掘ったらしい。ラビの乾いた笑い声はDVDブースへと消えた。


「何ボサッとしてるんですか木村さん。仕事しますよ、仕事。」

「あいたっ!分かってるよ、CDの角で叩かないでよ〜。」

ひかりが俺をチラチラ見ている。アレンとかいうモヤシみたいな野郎もそれに気付いたのか俺を一瞥して、先行ってますから。と言って店の奥に消えた。なんか睨まれたような気がするのは気のせいじゃない気がする。あ?もうよく分かんねえ。

ひかりは俺の方に近づいて小声で話した。


「ラビに無理やり連れてこられたんだよね?なんか、ごめん。」

「なんでお前が謝るんだよ。」

「いや、だって」

「別に俺がどこにいようと俺の勝手だろ。」

「そう、だけど。」


ひかりは俯いた。なんか今日はやけにしおらしいなコイツ。が、しかしこうしている間にもモヤシの視線が痛えんだよ。いつまでもくっちゃべってんじゃないですよ、的な。

「オラ、早く仕事戻れよ給料泥棒。」

「きゅっ・・・!失礼な。」

俺がシッシッと犬を追い払うような手つきであしらうと、ひかりは渋々店の奥へ戻って行った。


それから数分後、店内にひかりの声が響いた。・・・そんなことだろうと思ったが、やっぱりアイツはバイト中もうるさいのか。どうせまたなんか失敗でもしてんだろ。チッめんどくせえ。

俺はひかりの声がした方向へ足を進めた。進み始めて2つめの角、洋楽CDが羅列する棚を曲がった突如、ひかりの姿を見た。

が、例の奴もいた。
ひかりの頬を引っ張って何かを言っていた。

それとほぼ同時に俺の体内がとてつもない不快感に襲われる。胃袋の中に手を突っ込まれているような、吐き気がするほどの苛つき。


でも何故、俺がこんな風にならなきゃならない?これではまるで俺がひかりのことを、



―――好き。



頭をよぎった単語を一瞬てかき消した。誰があんなうるさい奴。

そうだ、俺はひかりを騒がせる元凶に苛立ってるんだ。俺はうるさいのが大嫌い。 アイツを余計にうるさくしたモヤシに苛立ってるんだ。

アイツの涙とは関係がない。俺は俺のために動くだけだ。


もう1度、2人がいる方を向くとモヤシの野郎とバチっと目が合った。お互いにそらさない。まさに一触即発。火花を散らしたように視界がチカチカした。


「先に休憩入ってて下さい。」


アイツはひかりに言ってもう1度俺を見た。ひかりが店の奥に消えた時、どうやら開戦するらしい。



いざ、出陣。
これは俺のエゴだ。



―――――――

うーん、
分かりにくいかな?
申し訳ないです。

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