涙を流す前に戦え。
「筆頭ォ!小十郎様が……!」
――その後の言葉だけが反響して、何つってたかは殆ど覚えてねえ。 それでも、俺の右目が奪われた事だけは理解した。それ以上もそれ以下もねえし、それで十分だ。 それだけで、俺の怒りは俺自身さえも飲み込みそうなくらい膨れ上がる。
「やってくれるじゃねえか。覇王さんよぉ……!」
ぎり、と、刀を握る手が軋む。幾度と無く噛んだ唇は、もう痛みさえわからねえ。 それが更に苛立ちを助長させた。奪ったやつにも、みすみす奪われた俺自身にも。 篭手の上から、刀身に触れる。文字通り刻まれた、小十郎の覚悟と決意。 自然に頬が緩む。俺とお前じゃ立場が違う。だから、同じだなどという薄っぺらな気休めを、自己満足のために吐いたりなどしない。
絶対に取り戻すと云う、その気概だけあればいい。
深く息を吐いて、刀を構えた。右目を奪われて視界は悪いが、何て事はねえ。 "竜"は全てを巻き込んで、天に昇ってみせる。
「Are you ready, Guys?!」
「Yeah!」
「Okey……Have a party!」
――だから今だけは、この感情を押し殺して。
涙を流す前に戦え。 (悲哀で泣くなど似合わぬのだ)
title:守護する10のお題 配布元:Abandon
アニメ二期の小十郎拉致展開ネタ。一回やりたかった。
110925 back
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