散らす紅葉





「政宗様、」


背後からかかった声に振り返る。勿論そこには、唯一の右目の姿。
戦場に立つような陣羽織ではなく、質素な作業着にたすきがけをしてる姿は、どう見ても不釣合い。
But、ソレさえも見慣れてしまった嬉しさと愛しさが、俺を自然に笑ませた。


「随分な格好じゃねぇか、Ah?」

「……申し訳ありませぬ」


ちょっとからかってみれば、眉間にしわを増やして低く謝罪。どうせ俺が本気じゃねえ事くらい、とうに分かっているだろうに。
くつくつ、と喉で笑いを殺していると、咎めるように――勿論、そこまで本気じゃなかろうが――政宗様、と名を呼ばれた。
こみ上げるのは、愛おしさ。


「Jokeだ。随分と景気がいいようじゃねェか」

「そうですな。今年は豊作ですぞ」


ふっ、と笑みを零す。俺に向いてねえ事はちっとばかしイラつくが、それを見れたから良しとしておく。
ちょいちょいと手招きをすると、小十郎はたすきと手ぬぐいを外して、俺の前に正座する。


「何かございますか?」

「Here. 土付いてるぜ」


は?と聞き返す小十郎に笑いかけて、手を伸ばした。
かすかに汚れた目尻に触れる。ちょっと力を入れて擦った後、頬の傷をそっと撫でる。
きょとり、とした顔は俺しか見れない。コレがあの"鬼小十郎"だと、誰が信じるだろう。
ちょっとした独占欲。少しばかりの、優越感。


「ありがとうございます、政宗様」

「You're welcome」


言葉を返して、名残惜しいが手を離す。温もりは手から消えていく。
そのはずが、手は再び温もりに包まれた。俺よりも大きい、武人らしいごつごつとした手。


「政宗様」

「Un?」

「お礼を、」


俺が言葉を理解するより早く、掌に落ちる唇。自分でも分かる、顔に集まる熱の感覚は、隠せそうにない。
してやったり、と笑む小十郎から、ふいと顔を背けた。







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テロップとか特に無しで書いたのでよく分からないことに。←


110921
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