**頂き物**

白兎様より頂きました。
創作ネタのほうの「錬金術と煙草」より







 
「オイ!そっちいったぞ!!第三班、追え!!」
天気がよく、晴れ晴れとしたとある休日。
俺こと春山尚人(はるやま なおと)は仕事に追われていた。
なんてったって休日に仕事をせにゃならんのだ、なんてそんなダメ人間的思考を働かせながらも、現在逃走中の犯人を追う。


 
俺が今なぜ犯罪者を追っているかということは俺の仕事が関係している。
俺は今現在、自警団体「ハルワタート株式会社」というところに所属している。
この「ハルワタート株式会社」というところは自警団体というものの、やっていることは
ただの何でも屋である。
依頼人の話を聞き、成功条件を決め、支払料金を決めて、お仕事開始。
さらに言うと、この自警団体に明確な休日はなく、たとえ非番であったとしても電話一本かかってくれば、その日の休日はおじゃんである。
正直、俺見たいな常にダメ人間思考、つまり休みたい、さぼりたい、仕事したくない、ダラけたい、などといったこと常に考えている俺とは相性最悪の会社であるが、俺にはここしか働くところがない。
まぁ、そのことについては長くなるので、またの機会にでも話すことにしよう。
閑話休題。


 
とまぁ、そんな感じの会社なのだが、今回の依頼はちょっと特殊なのだ。
というのも、依頼人は警察。
どうしても警察では手に負えない、現在逃走中の犯罪者がいるのでそいつを確保するのを手伝ってほしいとの依頼なのだ。
もちろん成功条件は現在逃走中の犯罪者を確保すること。
これはいわずもがなである。


 
さらに何故犯罪者が警察の手に負えないかというと、それは一部の人間に特殊な能力が備わっているからである。
備わっている、というよりも自身で身につけた、という方が正しいのだろうが、そこは置いておく。
とにかく、この世界には錬金術というものを扱える人間が存在する。
この世界の錬金術師は簡単に言うと、万物融解という、物質の性質を具現化している「精(エリクシール)」をとりだすことができる特異体質の持ち主のことである。


 
犯罪者はいわゆるその錬金術師なわけで、だからただの人の集まりである警察は手も足も出ないのである。
ただ、錬金術師も万能ではない。
色々と解明されていない事は多いし、使っている本人たちにも分からない事はたくさんある。
だが、ただの壁や床からたくさんの武器を出されたりすると、ただの人は中々手を出せないのだ。
その点、自警団体「ハルワタート株式会社」は安心である。
お気づきかもしれないが、俺が所属している「ハルワタート株式会社」に所属している人間は全員錬金術師なのである。
もちろん、俺も含めて。
だからこそ、警察から依頼がきたんだしな。


 
そんなわけで、本日非番であったはずの俺のケータイに電話が入り、今こうして犯罪者と楽しくも何ともない追いかけっこをしているのである。


 
さて、そんなお話をしている間に犯罪者を袋小路にする。
「さて、名前も知らない犯罪者さん。いい加減捕まってくんない?いい加減疲れたわ。」
ジーパンのポケットから煙草を取り出し、火をつける。
口にくわえて大きく吸うと、煙が口いっぱいに広がる。
疲れが少しだが吹き飛ぶ。


 
「うるさい!!何も知らないくせに、俺だけが悪物みたいに言うな!!」
犯罪者が何か喚いているが基本無視。
正直、俺は自分の興味があること以外にはやる気がない。
この仕事も仕方なくやっているだけで、積極的にやろうなんて思いもしない。
それは社長も他の社員も重々承知してるから、サボらなきゃたいていのことは笑って許してくれる。
そんなこの会社に愛着がないかと聞かれればそうでもないが仕事をしたくないかどうかとは、また次元が別だ。


 


 
そんなことを考えていると、まだ何か喚いていた犯罪者は俺が話を聞いていないことに気づいたらしく、奇声を上げながらこちらへやってくる。
その手には、細身の剣がひと振り。
錬金術で作り上げたものだろう。
が、そんなものは俺にとって大した脅威にはなりはしなかった。


 
俺は犯罪者をしっかりと見据えながら、煙草を口にくわえ、もう一度大きく息を吸った。
「うわぁあああああああああああああああああああああっっ」


 
あと10m・・・5m・・・3メートル・・・。
俺は大きく吸った息を思い切り吐き出した。
俺が吐き出した息は、まるで意思を持ったかのように犯罪者にまとわりつく。


 
「!? なんだ、これは・・・!!ゲホッゲホッゲホッ」
それを吸った瞬間、犯罪者は地へと倒れ伏した。


 
「おー、今回もよく効いたな。」
倒れ伏した犯罪者の顔を覗き込みながら、そう呟く。
「なんなんだ、これは!!お前は何もしなかったはずなのに・・・!!」
足もとから何やら喚き声が聞こえる。
うるさい。
今回一緒に仕事をしている仲間が来るまであと3分半といったところか。
なら、説明してやってもいいかな。
そう考えながら俺は口を開く。


 
>
「何をしたって?簡単さ。錬金術を使ったんだよ。俺が媒体につかったのはこと煙草。
知ってるか?煙草ってな、結構錬金術向きの媒体なんだぞ?まぁ、俺が勝手にそう思ってるだけなんだがな。仕掛けはいたって単純。普通に煙草を吸ってその成分と俺の体内にある二酸化炭素のエリクシールを融合させる。あとはそれをお前さんに向けてはきだしゃ、お前さんは倒れる。つくりあげ、吐き出した煙はいわゆる煙草の素みたいなやつだからな。軽い酸欠なら少ない量でも簡単に引き起こせる。酸欠でまともに考えることもできないその頭じゃ、融合も何もできないだろ?さて、こんなこと言ってる間にお仲間がきたんでな。悪いが、大人しくお縄についてくれや。俺の為にもな。」
本当に。
これ以上俺に仕事をさせてくれるなよ・・・。


 


 
そんなこんなで仲間に犯罪者を引き渡した俺はもう仕事を抜けてもいいとのお許しをもらったので、さっさと帰って寝ることにする。
家には誰もいないが、そこそこ広く独り暮らしとしては十分の広さだ。
あとはゆっくり休んで、また明日からの仕事の原動力とすることにする。
錬金術なんて力を持っていたせいで家を追い出された俺を向かいいれてくれたこの会社が、まぁ嫌いじゃないんでな。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -