黛の家族事情

黛の家族事情






彼の家族は4人いると聞いた。
父、母、兄、妹の4人。
父、母はどこにでもいるような平凡な親だと言った、兄はめんどくさいやつで、妹は腐っているらしい。腐っているとはなにかの病気なのだろうか?と、腐っているのは何かと聞けば、彼は「心」だという。心が腐る病気なんて、聞いたことがないが、きっと大変なのだろう。なにか身体にいいものを、お土産に持っていかなければならないな。

彼の実家は京都だという。だが、洛山から実家までかなりの距離があるため寮で生活をしているようだ。
彼曰く「家より寮のほうが静かでいい」らしい。
どうやら彼の家族はいつも賑やかみたいだ。
賑やかなのはそんなに得意ではないが、涼太や大輝でなれてはいると思うからまぁ大丈夫だろう。

彼の家は一軒家らしい。ただ、そんなに広くないと彼は言うが庭はあるという。庭があるならそれなりに大きいと思うのだが、ちなみに僕の家で一番小さいのは庭がね、え?言わなくていい?うん、わかったよ。君がいうなら仕方ない。
そんなことより、続きだ。


「それで、千尋のお兄さんはどこの大学にかよっているんだい?」
「…………実家に近いとこ」
「ご実家に近いなら……ふむ、あそこかあの最近できたとこだな」
これは一体どういうことだろうか、俺は自問自答をした。
しても答えなんてただひとつなのはわかりきっているのだが、それでも現実逃避がしたくなるのはしょうがないと思う。
きっと、この赤司征十郎が帰省について来る、なんてことをしてきたら大抵のやつは自らの終わりをみるだろう。
まぁ、あの無冠のやつらは喜ぶんだろうけど。
そんなことはどうでもいい。俺は、今、赤司征十郎が俺の家について来るはおろか泊まっていくという今世紀最大にありえないことに直面しているのだ。
俺が聞く赤司征十郎は金持ちのボンボンで、フェラーリとか乗り回して、家では毎日のようにトリュフとか食ってるっていう、迷信めいたやつなのだが、もし噂を信じるとして、こいつは俺のような極々一般的な家などに泊まり来て大丈夫なのだろうか、ということだ、俺のメンタルが。
「千尋の妹さんは?」
「………近所の公立」
「ほう、あそこか………」
さっきからこうやって人の家ことを根掘り葉掘り聞いてくる。
それのせいで、ゆっくりラノベさえ読めやしない。
「お前さ」
「ん?なんだい?千尋」
「なんで泊まりに来るなんてことすんだよ」
俺の心からの疑問に対しさもあたりまえのような顔をして、赤司は口角を上げる。
「そんなことは決まっているだろう」
「あ?」
「交流だよ」
交流とはコミュニケーションのことをいっているのか?電流のことでなく?コミュニケーション?こいつが?
俺のことを無理矢理バスケ部に引き戻し、今までこき使ってきたこいつが?
ありえないの、ただ一言につきる。
「お前、ただ単に俺をバカにしたいだけだろ………」
「違うよ、本当に交流さ。玲央の家にも行ったし、小太郎も永吉も皆の家に行かせてもらったよ。」
「へ、へぇ………」
「とても有意義だったよ。玲央の家はね女性が多いんだ、だからきっと玲央自身も女性らしくなったんだと思うがね、すごいんだ、女性ばかりなのに玲央が一番女性らしいんだよ。いや、母親らしいといっても過言ではないかもしれない。玲央がご姉妹やご両親の世話を一番焼いてるんだからね。小太郎の家も凄かったよ。弟さんが多くてね、小太郎が長男だって言われたときは驚いたよ。あぁ、けど弟さんと遊んでいる姿は確かに長男だったな。高校生には見えなかったけど。そう考えると永吉が一番予想どうりだったよ。寡黙そうなお父様とね、無口そうなお兄さんが、かなり永吉に、似ていたよ。お母様がねとてもおっとりした方で、なんだっけ?千尋がいっていた、あっ、ツッコミがこい?なんかそんな感じだったよ」


聞いてもいないあいつらのことをべらべらべらべらと喋り出す。珍しいとおもった。身内にたいして甘いやつだとは思っていたが、ここまであいつらのことが好きで好きでたまらなかったなんて思いもしなかった。
こんなに楽しそうに話しているのはほんとに珍しい。
「………とかね、とても興味深かったよ。」
「ふぅん………」
「だからね、千尋の家にも行ってみたかったんだ」
「…………」
「いい機会だろ?お互いの距離を縮めるのにもね」
「こっちからしたらいい迷惑だけどな」
「ふふ、まぁそういうな」
そういいながら、俺らは駅のホームを歩く。
どんなに嫌がっても、どんなに迷惑がっても、赤司は俺の家に意地でもついてくるだろう。いや、意地なんてはらずともついてこれるようなやつだ。
これは俺が腹をくくるべきなのだろう。
「はぁ……」
「千尋の家には後どれぐらいでつくんだい?」
「……まだ、だいぶかかる」
「そうか」
「ほんとについてくんのかよ」
「最初からそう言っているだろう。その為に荷物まで持ってきてるんだ」
「はぁ…………」
年に数回の帰省に俺は、人生最大の覚悟をしなければならないようだ。

「楽しみだよ千尋のご家族にもあえるのがね」


それは、まるで、悪魔みたいな一言だった。





〈fin〉




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