黒子の家族事情

黒子の家族事情



僕の両親は僕が物心つく前から離婚していて、母子家庭。
けど、おばあちゃんの家に住まわせてもらっていたので、寂しい思いをした事はそんなになかった。
遅くまで働く母を毎日のように帰ってくるまで起きると駄々をこねたのはいい思い出だ。
それでも、父親がいないというのは、子供ながらに少し劣等感を抱いたりしていた時期もあったりしたのだが、高校生にまでなると、そんなことはとくにきにならなくなるのだな、と最近よく思う。
しかし、そんなある日。まぁ、それ突然のことで、



お母さんが話したいことがあるからと、ちょっと高いお店へと連れていってくれた。制服なんかで良かったのだろうと、ちょっと居心地悪く思っていると、僕とお母さんが座っていた席に二人の男性がやってくる。僕は自分の目をうたがいたくなった。
心の底から、こんなことはありえないと。
しかし、それは紛れもなく、現実で、
「テツヤ、この人が今日からあなたのお父さんになる人よ、そして」

「彼が、今日からあなたのお兄さんになる、真くんよ」
めずらしく僕の表情筋が仕事をしていると思う。
なぜ?なぜ?なぜあの花宮真が?驚愕をかくせるわけがなく、
かくいう、目の前にいる男性の一人。
悪童本人も驚いているようで、僕はこの顔を一生忘れないと、そう思った。
お互いがお互い、こんなところで、こんな状況で、出会うなんて露も思っていなかっただろう。いや、思うわけが無い。
なぜって、あんなにも酷いことをして、あんなにも酷い敗れ方をして、絶対にお互いが会いたいなどと思うことはないはずだ、2度と会いたくないとはおもったとしても。

僕は悪童、花宮真を見据える。
彼も僕を見る、否睨みつけている。

これが僕の新しい家族だった。


***


あれからというもの、毎日のように悪態をつきあって喧嘩をした。ただ、お互いの親の面目もあるので、そこまで大きな殴り合いとかはできないと、僕も彼もわかっているので、他人から見てみればただの小言の言い合いにみえるかもしれない。ただ僕らどっちも本気だ。
それでも、お母さんは仲が良くてよかったわとよくわからない安心をしているし、新しいお父さんは美人だった。

一緒に生活するようになってから、彼がよくお母さんと一緒にキッチンに立ってる姿をみるようになった。
お父さんがいうには、よくご飯やお弁当を作ってくれたりしていたそうだ。
どうやら最近の僕のお弁当も彼がつくったもののようで、一瞬お弁当箱を投げ捨てそうになるほど驚いた。
僕が読みたいと思っていた小説を一杯もっていた。
こっそり拝借してるのは秘蜜だ。
僕がかだいをやってると彼も課題をやりだす。すごい量だし、なんて書いてるのかまったくわからない。それをスラスラ解いていくのだから、気味悪いったらないが、たまに僕がわからないところをこれでもかと皮肉に教えてくれる。とてもむかつくがたすかっている。

一緒に暮らすようになって、新たな発見ばかりで少しずつ彼の印象がかわっていくのが。自分の中でよくわかる。
それでも、やはり彼のことは好きになれない。
彼もきっとそうだろう。おそらく、僕ら兄弟はそんな距離感がちょうどいいのだ。
仲良くなる必要なんてない。
それが、黒子家もとい花宮家の家族事情である。

ということで、これから日記をつけていこうと思う。
過去に見返したとき彼を馬鹿にして笑えるように。



ふぅー、と息をついて僕はノートを閉じた。すると、タイミングを見計らったように、気に食わない兄が僕を夕飯に呼ぶ声が聞こえた。
僕は、億劫な腰をあげ食卓へと歩き出す。

キッチンのほうからは、ふわりと夕飯にのいい匂いがしてきた。
今日の夕食はなんでしょうか。


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