入学式
side*黒子テツナ
私が選んだこの高校、「帝光高等学校」はとても大きな学校だ。
1年生だけでも、200人以上はいる。
新設校でもないのにとても綺麗な校舎に見とれながらとぼとぼと、敷地内を歩き出す。入学式までまだ時間はある、教室にいてもきっと誰も気づいてくれないだろうから、私はこの大きな学校を散歩することにした。
新入生と、その新入生を物珍しそうな顔をして見ている先輩たちの話し声があたり一面に響いていた。
心地よいとは言い難いけど、それでも聞いていて苦にならない喧騒だった。
「あ、あの、ちょっといいか?」
「えっ?」
不意打ちだった、誰も話しかけてこないだろうと安心しきっていたから思わぬ事態に不覚にも驚いてしまった、
私に話しかけてきた彼も少し驚いたようすだった、
「え、えっと、なんでしょうか?」
私がそう聞くと、彼は恥ずかしそうに頭をかく、
「えっと、それが‥‥」
「?どうかしましたか?」
「あー‥‥、その、‥みち‥‥」
「道?」
「道に迷っちまって‥‥おまえ、体育館の場所わかるか?」
恥ずかしそうにでもどこか偉そうな彼の様子に私はついわらってしまった、
「わ、笑うなよ!!」
「ふふっ、ごめんなさい」
「謝るなら笑うのやめろよ!!」
「ごめんなさい、怒らせるつもりは無かったんです。」
「‥‥‥」
私が笑ってしまったのがよほど嫌だったのか、恥ずかしかったのか、彼は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。
「ごめんなさい、体育館なら私もこれから行くので一緒に行きませんか?」
「‥‥‥あぁ‥‥」
「それじゃあ、行きましょうか」
まだ少し怒った様子の彼と共に私達は体育館へ、向かって歩き出す。
「それにしても、よく私がわかりましたね」
「はあ?」
「だって、私のこと見えなかったでしょう?最初は、」
「何いってんだ?おまえ?」
「え?」
「最初っから見えてたぞ?お前のこと」
彼のその言葉をきいた瞬間、私の心に春の風が吹いたような気がしました。
「ありがとうございます」
「え?」
私が呟いた言葉は、彼には届かなかったけど、
けど、いつか、
「つきましたね、ここが体育館のはずです」
「おっ!他の生徒もいんな!Thank you!
」
「いえ、どういたしまして、それじゃあまた、また会いましょう」
「?同じ学校にいんだからいつでもあえんだろ?」
「ふふっ、そうですね」
「?へんなやつだな、それじゃ!」
「はい、また」
また、君が私のことを見つけてくれるといいな。
fin
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