なんちゃって格付けチェック
「わんこ、ねえわんこ」
自分を呼んでいるだろう声に振り返る。だいぶふざけた呼び方だが仕方ない。俺達には名前なんてあってないようなモノなのだから。
振り返って溜息。振り返らなければよかった。
「溜息とか酷い。でもそれもいい」
「気持ち悪い」
「あん、もっと」
「心底腹が立つから黙る」
「ケチだなぁ」
からからと笑う褐色の男にまた溜息。
「ミハエル、いいからちゃっちゃと仕事しろ。口はいいんだ、手を動かせ」
「はーい」
ボスの命令だ、しっかりセッティングしなくてはいけない。ボスの満足のいくように。ボスの喜ぶ顔の為に。ああなんて幸せか。
「わんこってポーカーフェイスの割に纏う空気が分かりやすいよね。ボスの事考えてたでしょ」
「俺は大体ボスの事しか考えてない」
「…大概だよねぇ」
さあさあ、早く仕事を終わらせよう。
次のボスの催しの為に。
「所でわんこ、格付けチェックって何か知ってるの?」
「知らね」
「デスヨネー」
さぁさぁ和装で着飾って始まるゲームを楽しもう「これ一番になったら給料上がるのかな」
「あ、ミヤさん。早く手伝ってよー。てゆうかそれならサクっとお年玉くれればいのにねー」
「それじゃあ面白くねえだろ?」
「あ」
「げっ」
「ボス!」
「うわわんこハート飛んでる」
「つーか、げってなんだ鼠」
「ナンデモナイデース。ボスの気のせいデース」
「ネズミ、わんこに刺されるからちゃんと謝っときな」
「本当ごめんなさい刺さないで」
「怒ってねーよ。な、犬?」
「ボスが言うなら」
((大概だなぁ…))