ハロウィン!



「ボスゥウウウウウウ!!」

珍しく慌ただしい音と声と共に、ドアを乱暴に開けたのは幹部のリラである。
が、普段の彼女とは言い難い容姿。それを見たプロテッツィオーネファミリーのボス、ルジェントはにんまりと笑った。

「やっぱり!ボスの仕業なんですね!」

「よく俺だって分かったな、リラ。」

「ボス、ここの所何か企んでたみたいじゃないですかぁ!怪しい薬師のところに行ったりとか!」

「流石リラ。よく見てる。」

「当たり前ですぅ。…じゃなくて!」

バンッと、リラはルジェントと自分との間にある机に両手を置く。
ルジェントを見つめるその目はどうにかしろ、と訴える光が宿っていた。

「ちょっとしたな、余興をしようと思ってな。」

「余興ぉ?」

「もうすぐハロウィンだろ?ちょっと早めの俺からのTrickだ。」

「……ボス。」

「そう睨むな。で、だ。勿論Treatもやるつもりだぞ。」

「…それで、『私たち』に何をさせたいんですかぁ。回りくどいですぅ。」

「話が早くて助かるな。」

リラがじとりとルジェントを睨むのをサラリとかわして、ルジェントは机の一番下の引き出しから銃を出して机の上に置く。
チラリとその銃に視線を送ったリラは一瞬眉をひそめた。
ルジェントはそれを確認すると流石だな、と低く笑う。

「オモチャの銃で、何をするんですぅ?」

「よく出来てるだろ?水鉄砲なんだぜ。作らせた。」

「はぁ。」

「ただの水じゃないぜ?解毒薬入りだ。」

ガタンッ。
ルジェントが言い終わるや否やその銃を奪おうとするリラの手を、ヒラリとルジェントはかわした。

「せっかくのハロウィンだからな、仮装するだけでも充分目の保養だが…。」

楽しそうに笑うルジェントを、リラは恨めしそうに見詰める。

「…暇つぶしですか。」

「ちょっとした余興だろ?」

「…どうしろって言うんですかぁ。」

「俺を楽しませろ。」

「率直で助かりますぅ。けど抽象的ですね。」

「なんでもいいさ。仕事で利益を得るもよし、仮装するもよし、菓子をくれるでもよし、だ。」

リラはルジェントの笑う姿を見て、肩を落として観念する。

「だからって、性別変える必要はないんじゃないですかぁ?」

「イタズラだ、いいだろう?」

「よくないですぅ。仕事もこの姿のまま?」

「トーゼン。」

我等がボスは、それはもう楽しそうに笑うのでした。



Trick or Treat!




さて、どうやってボスを満足させようか。








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