午後11時。疲れた様子で帰宅したなまえに、大丈夫かと呼びかければ、充血した目で睨まれた。なんで心配しただけなのに睨まれないといけないのか。なまえの思考は理解不能だが、大方、見れば分かることを聞くな、ということだろう。喧嘩になっても仕方ないので、お疲れ様、と笑えば、シャワー入ってくる、と返ってきた。

シャワーを浴びながら寝そうになって本気で自分にびっくりした。うまく押し付けられた残業が続けばこうなるのかとどうでもいい経験値が2つくらいあがった。こんなに遅くまで働いたのに、残業手当は中学生のお小遣い程度だなんて労働組合に訴えたくなる。こんなに遅くまで・・・はっと、気づいた。こんな遅くまで雪男は待ってくれていたのか。さっきリビングであった時は、あ、来てたんだとしか思えず、何か声をかけられた気もしたが、眠気でそれどころではなかった。自分に腹が立って、そして早く雪男の顔が見たくなったので、手のスピードを速めた。眠気なんて吹っ飛んだ。

なまえがシャワーに入っている間に、作っておいた料理を温め直す。兄さんに習ったレシピはなまえにとても好評で、いつもおいしそうに食べてくれるから嬉しい。兄に教わったということを言えば、いいお兄さんなんだね、と笑うなまえがすごく好きだと思った。料理を並べ、箸をそろえていると、どたばたと洗面所の方から音がして、なまえが転がるように走ってきた。
「さっきはごめん、眠くてぼーっとしてて、」
申し訳なさそうに謝るなまえだったが、テーブルの上の料理をみて目を輝かせる。ありがとう、ちいさく呟くなまえが、本当に好きだと思った。


いつも通りのおいしいご飯を食べ終わり、片付けをしていると、シャワーを浴びていた雪男あがってきた。青のチェックのパジャマがかわいらしい。デザートあるけど、と雪男が冷蔵庫からプリンを出したので、私はコーヒーを用意する。
プリンを食べながら今日会ったいろいろなことを話す。エクソシストの仕事は、一般人の自分には理解できない部分があるけど、まとめれば雪男はかっこいいということだ。と、前に雪男に話したら、その要約力はなんとかしないとね、なんて言われた。でも顔が赤かったから笑ったら怒られた。


なまえは後輩に残業を押し付けられたらしい。いいよ、私やるよ、なんていつもみたいにへらっと笑って引き受けたに違いない。想像が容易なため、あまり怒る気にもなれなかった。とりあえず、自分の体は大切にしてくれ、と言えばへらっと笑って、了解、という。絶対了解してないな、と思ったことが顔に出たのかもしれない。
「私には雪男がいるから大丈夫だよ」
「そういう問題じゃないだろう」
ため息交じりに言えば、違うよ、と怒られる。
「雪男が待ってると思えるから仕事もがんばれるんだよ」
雪男は違うのかな、なんて可愛いことを呟くなまえに勝てるはずもなく。
同じだよ、と言えば、嬉しそうに笑うなまえを見て、結婚しよう、と口走った。


いきなりのプロポーズに固まる。そういうのはもうちょっと雰囲気のあるところでするものでは、とか、どういう会話の流れで、とかは思ったけど、思わず言ってしまった、といった様子の雪男をみて、はい、と迷わずうなずいた。言った本人が一番驚いていたようだった。私が雪男のプロポーズを断るわけがないのに。嬉しくなって抱き着けば、力強い腕に抱きしめられ、どちらからともなく唇が重なった。

君に幸は降る

-------------------------------
blue blue 様に提出。初雪男でした。
0818

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -