知られぬ恋 |
ちくしょう、かっこいいなぁ、こうなりたいなぁ。 初めてそう思えた人は、同い年のバスケが大好きな少年だった。 彼を追いかけるようにしてバスケをはじめ、そうして俺についた教育係は影の薄い地味な子だった。 なんでこいつなんだ、そう思ったこともあったけれどバスケを続けるうちに彼――黒子っちもスゴイ奴なんだと知り、不満はなくなった。 バスケって面白い。 どれだけ真似しても真似出来ない奴がチームに何人もいて、その中でも圧倒的に輝く彼が俺は大好きだった。 青峰大輝。 彼と出会えたことは多分、俺にとってすごく幸せなことだったと思う。 彼の後ろをついて歩いた。部活後はねだって1対1を何度もしてもらった。定期テストのときは一緒に赤司っちと緑間っちに頭を下げにいって、ひぃひぃ言いながら勉強した。 俺は、青峰っちに憧れていた。いつだって見ていた。だから、真っ先に気づいてしまった。 「テツ、行くぞ」 「はい」 俺の尊敬する彼は、多分、黒子っちが好きだ。そして、多分黒子っちも、彼のことが、好きだ。 ただでさえ光と影という二人の間には信頼関係がしっかりと築かれていて、そこにレンアイカンジョーなんてものが入ったら、もう俺が入り込む隙間なんて髪の毛一筋程もない。 「青峰っち、1対1はー!?」 馬鹿なふりして問いかけてみても、「今日はナシ、また今度な」で返される。明日こそは絶対すよ、なんて大声で返すと鷹揚に手をふられた。黒子っちは何を考えているんだかわからない目で俺を見て、そのまま青峰っちを追いかける。 「あーあ……」 置いていかれて、ぽつんとこぼす。 別に、彼ら二人に遠慮する必要はない。今までどおり俺はしたいことをすればいい。何も気づいていないふりをして、1対1をねだり、テスト勉強をし、なんなら昼食だって一緒に取ればいい。帰る時だって一緒に帰ろうって言えばいいのだ。 わかってる。 でも、わかってることと出来ることは違う。 だって彼らは何も変わらない。馬鹿なふりしてみても、気づいてしまった事を伝えてみても。きっと彼らは変わらない。 そうして変わらない彼らに、二人独特の空気感に、俺は傷つくんだ。 「ひどいなぁ、青峰っちは」 わかってるけど出来ない。そんなこと、今まで経験したことなかった。なんだってそこそこできたから、ミンナが言うその言葉の意味がわからなかった。 でも、今、わかってしまった。 ――わかってても、できないことってあるんだなぁ。 「キッツ……」 一人ぽつんと呟く。 この苦しい気持ちがなんなのかわからない。 けれど、多分俺はもう以前のように青峰っちや黒子っちになつくことはできなくなるんだろう。 それがひどく悲しかった。 [Box] |