あーくっそいらいらする。

なんでうまく返せねぇの。
なんで同じとこで外すの。

みんなもう仕上ってんのに。
俺がこんなんじゃだめなのに。



あー…



「ただいまー」


…仁王帰ってきた?え、うそもうそんな時間?


「て暗!電気もつけんとどうしたんじゃ」


うるせえな俺は今悩んでんだよ。電気つけたらなんか雰囲気壊れんだろぃ。


「ん?ブン太泣いとる?」


泣いてねえよ。泣いてねえからどっかいってくんないかな。


「お前さんひとりで泣くとき絶対体育座りするもんなぁ」


なんで知ってんだよきもい。てか泣いてねえっつの。普段の白い照明じゃなくオレンジの優しい色の方つけるのもやめろ。


「どうした?言えることなら言ってみ」


言ったらどうにかなんの。テニスうまくなんの。言ったとこでどーにもなんないじゃん。

俺のことは、俺にしかわかんないじゃん。


「黙ってちゃわからんよー」


うるさいな。


「なあ、言うてみ。言うたとこで俺が解決してやれることじゃないかもしれんがの、それでも一人で抱え込むよりええじゃろ」


お前はエスパーかばか。んなこと言われたら吐き出したくなんじゃねえかよ。ばか。


「ま、言いたくないんなら無理にとは言わんけどね。けど何も教えてくれんゆうのはちぃと寂しいのぅ」


あー、もうっ!


「だっ、から…!っん、え、俺…」


泣いてんの?うまく喋れねえ。


「ゆっくりでええよ」


「っ…俺、テニスっ、ん、うまっ、く、できなく、って…」


ああもう涙止まんねえや。ちくしょー白髪頭め。


「、ブン太は充分上手ぜよ」


うっわ最悪。お前になんか言わなきゃよかった。


「て言われんのは嫌なんじゃろ?」


…は?


「どうせ誰に相談してもこう返されんのがオチやけんね。やけ一人で抱え込んどるんじゃろ?」


なんだこいつ。なんなんだこいつ。


「ブン太自身が満足せんのやったらいくらでも練習付き合ったるから、一緒にがんばろ。自分で満足いくまで上手くなろ」


「…っ、におっ…に、ッ…!」


俺結局お前じゃなきゃだめなんだわ。お前くらいしかそんなん言ってくんねえし。どこまでもどストライクな言葉投げ掛けてくれるなちくしょー。

悔しいけど、


「っ、おれっ…!」


今だけ弱いとこ見せてやるよ。


「よしよーし。決勝までもう少し時間あるき、一緒にうまくなろうな。たくさん練習しよ」


「んっ、」


頭撫でる手の温かさとか、いつもと変わらない柔らかい声とか喋り方とか、少し甘いいつもの香水のにおいとか、仁王の全部に安心する。


仁王がいてくれてよかった。




「勝とうな、決勝」


「、当たり前!」






涙を拭いて少し上を見上げたら、触れるだけのキスをされた。













..




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