▼仁王と柳



女は単純で簡単だ。可愛いだとか好きだとか、そんなことを適当に吐いてみればほら、すぐに手に入る。その点男は難しい。そりゃあかっこいいって言われたら嬉しいだろうけど、女子が可愛いって言われるのとはなんか違う。あまり恋には発展しない。

「男なんて単純でかわいい生き物よ」

なんてことを豪語する奥様が現実に存在するのならば是非ともその極意をたしかめたいものだ。

そんな男に、女子でもなんでもない寧ろ自分より格好いいのではないかと思われる人物がかっこいいって言ったって、嫌味にしか聞こえないと思う。いや、自惚れとかではなく。



はて、どうしたものか。





試しに、笑顔でかっこいいと言ってみる。


「今日もかっこええの」

「はあ?当たり前だし。あ、りさちゃんおっはよー!」

とんだナルシスト発言して女の子んとこに飛んでいきよった。女の子は可愛くて話してて癒されるから好きだって前に言っとったなあ。あ、なら俺も可愛くて単純な人間演じればええんじゃろか。…………いやいや、ねーわ。




真顔で好きだと言ってみる。


「俺、お前さんが好きじゃ」

「ありがと。それはどの子に言う台詞の練習?A組の彼女?D組の彼女?それとも先輩?」

何かとんだ勘違いをしてらっしゃるご様子。





友達的ノリでかっこいいと言ってみる。


「ブンちゃんは今日もかっこええのー」

「あはは、惚れんなよ」


もう惚れちょるんですけども!!!






友達的なノリで好きだと言ってみる


「ブンちゃーん、好きじゃー!好いとー!」

「お前さぁ…。そういうこと簡単に言わねえ方がいいと思う」


…ありゃ、何故か不機嫌になりよった。







ここで冒頭の話に戻るが、一体この男にはどうしたら俺の思いが伝わるのか。既に好きだと思いの丈は伝えている。もうこれ以上伝えようがないってくらいに伝えたつもり。なのに一向に伝わらない。伝わる気配すらない。

とりあえず、この実験をしてわかったこと。

なぜかブン太は俺の色恋沙汰について相当な勘違いをしている。
前から知ってはいたけど女の子大好き。きっと可愛くて巨乳なら誰でもええんじゃな、美乳派の俺は理解に苦しむ。
女好きなら男に言われたって引くがブン太には何言っても軽ーくあしらわれてしまう。
実力行使でいっていいのだろうか。そんなことしたら嫌われるに決まっとるからやらんけど、それにしてもこんなにも伝わらないとは…。

ここでひとつの可能性に辿り着く。
逆に言い過ぎて真剣みがなくなってきてるのか?
もしそうだとしたら、じゃあどうすりゃいいんだって話しだ。


好きを伝えるより嫌われたくないって気持ちが強い俺は、所詮コート上だけの詐欺師。

臆病な自分に苛々する。













「どうすればええんじゃ…」

「知らん」

「参謀つぅめぇたぁいぃ」

「(開眼)」

「すいません調子こきましたすいませんもうしません」

「…お前らしくないな。伝えたいことがあるならストレートに伝えたらどうだ」

「参謀…」










「………俺の話し聞いとった?」

「失礼な、勿論聞いていたぞ。精市にいい加減にしろといいたいのだろ?」

「わあ、微塵もあっとらんびっくりじゃ。そんなに堂々と嘘つくやつ久々に見たわ」

「何を言っている。俺は嘘などついていない」

「いやいや、…はあ、なんかもう疲れたわ」

「どうした、折角ボケたのにつっこまないとは。俺の見込み違いだったな、お前はどちらかというとツッコミ側の人間だと思っていたんだが」

「確かに突っ込み側やけど…。流石に参謀には突っ込めんよ」

「もうお前の話は聞かん。勝手に伝えて勝手にフラれてろ」

「冗談じゃよ。しかももう伝えたってゆうとうやろ」

「お前の場合、言葉が軽くなってしまっているのではないか?だから相手だって軽い気持ちで受け取って、軽く流す。ふはっ、実に愉快な悪循環だな」

「参謀の態度は実に不愉快じゃけどね。……あ、もしかしたらブン太は俺んこと結構すきなんやなか…?」

「でたよ自意識」

「ちょ、その言い方やめてくれんかの。なんじゃイラっとした」

「何故そう思う」

「ふざけながら好きじゃって言うたとき、不機嫌になったんじゃ。それって、心にもない感じで言われたから悲しくなったんとちゃう?」

「……」

「え、なに?なんねその顔!いやまあさすがに自惚れすぎとるかなーとは思ってるけれども」

「畜生こんな脳内まで綿毛みたいなやつと思考が同じだった畜生。…という顔だ」

「わからーん。全然わからんうえにだいぶ失礼じゃな、畜生って2回も言うとるし」

「…まあ、そういうことだ。データマンの俺が言うんだからきっとそうなんだろう。じゃあ俺は借りてきたゴセイジャーを見なければないから帰る」

「ん!?ちょ、つっこみどころめっちゃ多い!」

「ばいばい」

「ぶふっ」


参謀はいつも通りぶっ壊れとるのぅ…。まともになったり崩壊したり何があったんじゃ。




…………。





うむ。






やはり男は難しい。






けど、いやだからこそ。




たったひとつの手がかりから得た僅かな自信と、百発百中のデータを味方に。






もう少し頑張ってみようじゃないか。












絶対オトしちゃる!













...
こういう類いの話は書けない




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -