朝。俺の腹の上で揺するちびと小さい手で顔をぱちぱち叩いてるちびに起こされてやっと目が覚めた。「はやくごはんたべるよ!」って服を引っ張るちび共を見ながら、まだ完全に覚めない頭にぼんやりと浮かんだのは、合宿でもどこでもいつも俺より先に起きてるお前のこと。そんな自分に苦笑して、俺を起こしてくれた弟たちと一緒にリビングに向かう。



リビングに着くと俺の髪を見て両親が笑いやがった。父さんは「先輩に目ぇつけられても知らないからなー」て言いながら俺の頭をわしわし、母さんは「トマトみたいね」て普通に爆笑してる。

…ふんっ。いいもんね別に。これはただのきっかけ作りだから。
心の中だけで反抗して、笑われながらも急いでご飯を食べいつもより少し早く家を出た。

真っすぐだけの道を歩いていくと、ちょうど信号の辺りにお目当ての人物発見。太陽の光りを反射させてぴかぴかしてる特徴的な銀髪。まだこっちには気付いてないみたいだから、近くにあった店のガラスで自分の姿を再確認する。


緩く着た制服。
染めたばっかの赤い髪。
よし、今日も俺は天才的にかっこいい!





「にーおう」


「お。おはようさん」


「ん!」


早く、早く気付いて。


「あ、髪染めたんじゃね」


「そ!ど、似合う?」


「おん、めちゃくちゃ似合うとる」


「だろぃ!」


ああ、溶けてちゃいそう。笑いながら頭を撫でてくれる仁王の目に俺が写ってる。なんかもうそれだけで嬉しくて胸がいっぱいになっちゃう。…て、俺変態?

こんなんじゃ好きなんて絶対言えないよ…。











いつも通り仁王のせいでドキドキしっぱなしの1日も、残すは部活のみ。といっても俺は部活と仁王のためだけに学校来てるようなもんだから部活の時間が一番好きだったりする。

なのに。な!の!に!

HRも終わって部活にいこうとした俺を妨害するような土砂降りの雨。
うちの参謀が「明日は晴れの確率98%だ。雨はありえないな」なんて言ってたから超信じてたのにさ!

玄関でうーうーなってたら、幸村くんからメールが。
『今日部活中止』
珍しく筋トレもない完オフらしい。なんてこった。

仁王に会える時間がいつもより短いのはすっごくすっごくすっごく残念だけど、いつまでもここに居るわけにもいかないし、仕方なくカバンに入れっぱなしのオリタタミ傘をだす。部活中止とかほんと最悪。ついつい大きなため息をついた、

そんな時、


「しょうがないから入っちゃる」


て、いつの間にか隣に仁王がいた。入ってやるって言ったくせに俺の手から傘を取り当たり前のように歩き出す仁王に、俺も濡れないように少し小走りした。


「い、いいよ俺の傘だし。俺が持つ」


「一緒に入るんやけ、デカイ方が持たんとあかんじゃろ」


「……ふんっ、そんくらい俺最初から知ってたし!」


「ぶふッ!」


「笑うな!」


やめてやめて笑顔可愛いかっこいいヤメテ。


「可愛いのう、ブン太は」


「は、はあ!?」


ああもう!!どんだけ惚れさせたら気ぃ済むの!!?


そんな俺の内心の悶えなんか知らない仁王は、少し笑いながら真田の話をしてる。なんで真田なんだよ。いや確かに面白いよ真田は。なんかもう存在がギャグだよ。けどさ!だけどさ!
なんでオリタタミ傘ってこんな小さいのかな!とか。お互いが濡れないようにするにはぴったりくっつくしかなくて触れてる右側が熱を持ったみたいにジンジンしてるとか。俺の心は悶々しっぱなしなの…!

ハッ!つか相合い傘じゃねこれ!?今更だけど相合い傘ってやつだよね!?


…あーもう…!考えれば考える程息が詰まりそうになる。仁王に触れてる右手は震えちゃってて、きっと顔は赤い。

…女々しいなあ、俺。



「ん?ブン太手ぇ震えとるよ。寒い?」


「は!?え!いや別に!?」


「どしたん、顔真っ赤なり」


「あああ暑いの!」


「ほうけ」


ああ!もう!笑ってんじゃねーよばかあ!

なんだこれ、泣きたくなってきたぞばかあ!




自分の涙腺と葛藤してるうちにも、どんどん歩いてるわけで。
気がついたら駅まで残り5分程度。俺と仁王の家は駅から反対方向にある。




…駅に着いちゃう。

どうしよう、もうバイバイしなくちゃいけない。


「ブン太」


「ぅえ!?」


やば、変な声でた。仁王がいきなりこっち向くからびっくりしたじゃん、恥ずかしい。こんなとこ見せたくない嫌だやだこっち見ないで。

なんでかはわかんないけど、お互い、動いてた足が止まった。傘の上からはもう水がぶつかる音はしない。



「…手、つないでもええ?」


「……へ、」


「雨、止んだし。あと5分くらいで駅着くし…。や、嫌ならええんじゃ、うん、ごめ「手繋ぐ!」


気まずそうに話す仁王の言葉を遮って震えたままの右手を差し出した。一瞬ぽかんとした仁王が嬉しそうに笑って、それにつられて緊張でガチガチになってた俺も笑って。


オリタタミ傘に占拠されてた仁王の左手が空いて、代わりに俺の右手と絡まる。




こんなことがあるなら、たまには雨もいいかな。






…なんてね。











...
日和に捧ぐ^ω^w




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