▼モブ視点



「よし、じゃあこの問題をー…丸井!」

「寝とりますね」

「いや起こせよ」


はいここで、モブこと佐藤が今の様子を説明したいと思います。て言ってもそんな大したことじゃなく、授業中に先生が当てた生徒が爆睡こいてたってそれだけの話。……ただまあ、その指名した相手が少し悪かったんだけど。いや、正確に言うと、そいつを溺愛してる隣の席の銀髪がタチ悪い。


「こんな可愛い寝顔してスヤスヤ寝とる子を起こせと?」

「授業中スヤスヤ寝る方がおかしいだろ?」


心の底から意味がわからないよな顔をしている隣席の銀髪もとい仁王、まともなこと言ってる教師。そう、確かに先生の言い分は正しい。一般的にもまともだし、教師として当たり前のことをしてると思う。けど、いくらそれが世間一般の常識であっても丸井厨の仁王に限って常識じゃなくなるんだよなあ。仁王のルールは丸井を基本として出来ていて、それが覆るのは丸井本人が否定したり拒否した時だけ。依存度高めで少し危ない気もするが、それだけ人を愛せるってのも一種の才能だと俺は思っている。


「絶対に起こさん」

「……もういい。俺が起こす」


頑なに言う事を聞かない態度に溜め息をひとつ吐き、丸井の真っ赤な頭へ手を伸ばした。…はずだったが、頭に触れる前に普段なかなか見られないほど冷めた顔をした仁王よってに叩き落とされた教師の手。
パシッ、なんて小気味良い音が教室に響いた。


「なんのマネだ?」

「ブン太に触んな」


誰もが息を呑む、一触即発のピリピリした空気が漂っている。チラリとその原因を伺えば、
いつもより数倍低い声と視界に入った瞬間土下座したくなる程冷めた表情をした仁王に情けなく鳥肌が立った。まさに誰おま状態。整った顔の有効活用は少し破壊力がありすぎる。


「ブン太は数学苦手だしお前のことも嫌いだから毎回サボるか寝るかだけど、授業内容は俺が教えてるからテストもそこそこ点数取れてるだろ。なのになんでわざわざ授業を受ける必要がある?ないよな?ないんだよ」

「いや、「取り敢えずお前はブン太に触れんな声掛けんな目合わせんな見んなもうブン太の半径1キロ以内に入るなそれでもブン太の嫌がることをわざわざするってのがどのくらい俺のイライラを買うか解らないようなら全力で解らせてやるまでだ」


一息で言い切った。こいつ一息で言い切りやがった。愛が重すぎてすごい通り越してもはや怖いな、仁王の丸井溺愛具合に慣れている(強制)俺でさえだいぶ引いたぞ。
てか仁王の全力ってなんだろう……丸井関連だしやっぱテニス部総出で潰されんのかな。あっ
、一瞬しか考えてないけどわかる、何その無理ゲー。某イップスの方とか降臨なされたらもう立つことさえも不可能じゃん。いやたぶん某イップスの方まで辿り着く前に一般ピーポーな俺らの命なんて虫けら同然に踏み潰されてるな。テニス部怖ぇよマジで。

俺がそんなある種の現実逃避に陥っている間にも、仁王と先生の言い争いは続いている。正直早く終わってほしい。


「お前ほんとふざけるなよ!?」

「ふざけとらん」

「授業にならねえだろ!もうなってねえけど!!」

「ほう、自覚あるなら今からでもまともに再開したらどうかの」


わあ、仁王の顔めちゃくちゃ腹立つなあ。台詞も相まってぶん殴ってやりたい仕様だなあ。先生よく我慢できるわ。


「……仁王、よく聞け。お前が丸井大好きなのはわかった。ただ俺だって丸井のことが嫌いでこんなこと言ってるわけじゃないんだ。いいか、高校行ったら嫌いだから寝るなんてこと通用しなくなんだぞ?その時に困るだろう?それにこのままの点数だと平常点的に希望の高校に行けなくなるかも知れない」

「いつもちゃんと勉強会しとるんじゃがの。昨日もしたし」


はて、なんて胡散臭く小首を傾げる姿に腹が立ったのはきっと俺だけじゃないはず。もっと言うとそれを目の前でされた先生はぶん殴りたいくらいだと思う。こいつは本当人をイラつかせる才能に長けてるな。
しかも実際勉強してんのなんてものの5分程度だろ?後はナニしてんだか…。たくっ、モテるくせになんで男同士なんだよ嫌味か!嫌味なのか!なんかもう俺泣きそうだぞリア充め!


「予習か?ならその成果を今日発表し「復習じゃ。授業なんて寝るかサボるかしとるブン太に、次の日の内容教えても無駄じゃき。そんなんもわからんのか?ようそれで教職につけたもんやね。はあーあ、日本も終わりじゃのー。俺とブン太の明るぅい未来はこんな大人共のせいでお先真っ暗じゃあーあ」

「っ、…もういい、好きにしろ…!」


ん?なんだなんだ、これはちょっと予想外だぞ?……あれ?は?え?折れた?この人折れちゃった!?仮にも生徒を更生させる説き伏せる側の人間が!?マジかよだっさ!しかも半泣きで気持ち悪いし!マジ激ダサ!
あっ、前に街ですれ違った青いキャップ被った人が使ってた 激ダサ、意外とすぐ活用できたわ!画期的な言葉!激ダサ!!!

そんな激ダサ教師を心の内で罵倒しつつ、仁王に目を向ける。こいつもこいつでやりすぎだよな。
まあやりすぎっていうか、しょうがないっていうか…。丸井に関係してること以外は冷静なんだけどなー。うーん、残念なイケメンだ。

…………あれ、俺がしみじみ思ってる間に先生が本当に1キロ離れようとしてるんだがなんなの?授業しないの馬鹿なの死ぬの?俺ら一応受験生なんですけど?受験生ナメとんのかい!




ハァもう、立海は変なやつだらけだな。
(主にテニス部)







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