仁王雅治はかっこいい。

何がかっこいいって、もちろん見た目だ。
身長は平均だけどそれでも俺と並んだら11pも高くて、細く見られがちだけどそこは強豪テニス部でレギュラー張るだけの筋力があって、実は腹筋も割れてて、腰の位置高いつまり足長くて、余程顔整ってない限り似合わない銀色長髪が嫌味なほど似合ってる。切れ長の目、意外と長い睫毛、通った鼻筋、口元のほくろ。ぱっと見だとイ、イケメン!!!くらいだけどちゃんと見たらなんかもう気持ち悪いくらい整ってる。きもい。かっこいい通り越してきもい。

意識してかっこつける時はあんなにも気持ち悪いのに、無意識でとる行動が死ぬほどかっこよくて、こいつは本当どれだけ俺の心臓を緊急停止の危機に晒したら満足するのか。仁王のくせに。ホント、仁王のくせに。


つか、なんで俺が今こんなに仁王を観察するような状況に陥っているかというと、授業中がっつり寝ちゃった俺に数学の居残り用プリントが渡され、毎度毎度授業をサボる仁王についに勘忍袋の緒が切れた国語担が、大量の居残り用プリントをご丁寧に冊子にして持ってきた帰りのHR直後に遡る。どうせなら一緒にやんね?ってことで部活には遅刻という形をとらせてもらい、2人しかいない放課後の教室で軽くセクハラをうけながらも必死に解いてたわけよ。でも凄いね、さすが放課後。授業中とは比べものにならない睡魔が襲いかかってきた。もうこうなったら1回寝ようと思って、仁王は絶対変なことすんなよって言い聞かせて寝た。

そっから結局1時間くらい寝ちゃって、起きて仁王見たら珍しく爆睡してるわけ。どんだけ深く寝てんのか知らないけど何回呼んでも起きなくてさ。聞こえてくるのは、規則正しい微かな寝息と、グラウンドにいる運動部の掛け声と、虚しく響く俺の声。
いつも何してても俺が先に寝ちゃうから(今回も実際そーなんだけど)、仁王の寝顔をまじまじと見たのは初めてでいろいろ観察してたってとこで冒頭に戻る。


うん、せっかくだから観察を続けようと思う。

………ああもうほんとかっこいいな。見れば見るほどかっこいい。すげーかっこいいよ仁王。顔が。顔が本当にドストライク。どうしよ?俺どうしよう?いやどうもしないけど。こいつの中身ろくに知らないで好きになる女の子の気持ちちょーわかるわ。体育んときとかキャアキャア言われてんのにも納得だわ。そんなやつの頭の中が俺で埋め尽くされてるとかこれなんて優え幸せ!…………周りの目はまあ、完全に気にならないって言ったら嘘になるけど。男同士付き合ってる限りずっと偏見の目ぇ向けられんだろうなくらいには考えてる。有り難いことにクラスにも部活にも公認されてるし、偏見とかは初めから覚悟の上だから特に敏感になってはいないかな。
あ、でも前に俺が女子の制服着て仁王と歩いたとき、ガチで女の子だと思われてたのはなんとなく屈辱。まあ俺天才的だし?どんなモンでも似合うのは当たり前だけどさ?真田に「丸井の姉妹か?」なんて真顔で言われたのはまじ屈辱的だった。だってそれって、俺男らしくないってことだろ?確かに今まで一番言われてきた言葉は可愛いだけど。可愛いのは自覚済みだから誰か俺のかっこよさに気付け。

けどなあ、うん、世間一般では仁王みたいなのをかっこいいってゆーんだよなあ。実際、仁王かっこいいもんな。中身はアレだけど。
あーあ、俺仁王になりてー。あ、でも仁王になったら俺仁王と付き合えねーじゃん。つか会えねーじゃんヤれねーじゃん。仁王に好きって言ってもらえねーじゃん。

……俺、俺として生まれてきてよかった…。






「ブン太」

「?ってうわっ」

寝てると思ってた仁王が急に目を開いてびっくりした。少し笑いながら、視線が絡まる。

それだけなのに心臓が激しく脈を打った。

「なん、俺そないかっこいい?」

「は?」

余裕ぶった仁王が言ったのは、どっかで聞いた…いや、言ったことのあるセリフ。

「もー、あない見られるとドキドキするぜよ」

「…ばっかじゃねえの」

うるさいうるさい。その余裕ぶった微笑みを今すぐにやめろ。早急にやめろ。ああ顔が熱い。

「やって俺んこと見とったじゃろ?」

「は!?知ってたのかよ!?」

「なんでもお見通しなり」

ありえねーだろ、って思いたいのに、何もかも見透かしてるような仁王の色素の薄い瞳がそんなことを考える余裕さえ与えてくれない。

この白髪頭め!

「ずるい」

「かーわい」

俺の精一杯の攻撃は何の意味も持たなかった。カタンと椅子の動く音がし、薄く開かれた仁王の無駄にえろい唇とキラキラした銀髪が降ってきた。







《好きな仁王は雅治です》








...
なんだこれは




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