家庭科の授業でシュークリーム作ることになった。
この科目に関しては実習だけ大好きな俺は普段サボってるにも関わらず堂々と参加してる。そしたら何故か仁王も参加してる。しかも堂々と。そして何故か同じ班になった。班決めはくじ引きだったから神様のイタズラ☆とか運命とかそんな可愛いもんじゃなく、仁王のズルだと思うしそう思わなきゃやってらんない。


「ブン太ッ!」

「うわっ、ちょ、馬鹿かテメェ!いきなりくっついてくんな死ね!」

「予告したらブン太拒否るじゃろー?」

「語尾のばすなキモい」

まあでも、別に同じ班だからってとやかく言うつもりはない。なったもんは受け入れて諦められるくらいに俺は冷静な考えの持ち主だ。それに本来なら好きなやつと同じ班なんて大変喜ばしいことなんだろうし、いかにも青春って感じなんだろう。本来ならば。

「やー、冷たーい。ブン太が凄く冷たーい」

「キモーい、仁王ちょーキモーい」

誰が世間一般通りいくって言ったよ。ほんとふざけんなこいつすげーーーーうざい。なんで俺こんなやつ好きなんだろうって頭抱えるレベルでうざい、うざすぎて泣きそう。普段の三倍くらいうざい。え、ただでさえうざいのに大変じゃないのかって?大変に決まってんだろ常考。
お菓子とは無縁の生活してるから作ったことないってのは全然許容範囲内だけど、だからってベタベタベタベタしていいとは一言も言ってないんだよ俺は。許した覚えがないんだよ。


「とりあえずブン太との子供見たら死ぬ」

「じゃあ一生死んでくんねえじゃん。最悪」

「しかも死ぬときはブン太道連れにするしの」

「ヤンデレですねお腹いっぱいです」

このくらいの発言はもう日常茶飯事になりつつある。本当にそう思ってるのか冗談なのかは知らねーけど、とりあえずそのくらい愛されてるってことだから悪い気はしない。

とか思ったり思わなかったり…。まあ現在進行形でうざいことには何ら変わりないんだけど。

「てかシュークリームって家庭科とかで作れるくらい簡単なもんなんじゃね」

「今更そこかよ…。今シュー生地焼いてるぜ。生クリームとカスタードどっちがすき?」

「んー、生クリーム」

「んじゃな「をつけたブン太がすき」

語尾にハートでもついてるような台詞を満面の笑みで言う男子中学生はなかなか気持ちが悪い。それを目の前の銀髪は何も考えずにやってしまうんだから本当に気持ちが悪い。
だいたい、生クリームつけた俺ってそれただのクリームプレイじゃん。去年の誕生日にやらされたやつじゃん。

うわ思い出したらなんか苛々してきた。
うざいし気持ち悪いしで吐き気も催す。

「ん?どしたッん…みぞ…!みぞおちっ…」

「死ねよもう」

だから、ついつい仁王の鳩尾にめり込ませてしまった俺の拳には何の罪もないよな、もう一発いってもいいくらいだよな。
そんなことを考えながら生クリームをかき混ぜる。手際の良さが天才的すぎて惚れそうなんだけど。

「カスタードでもええけど白さが足り「足りねーのはお前の脳みそだよ。一緒にかき混ぜてやろうか?」

「嫌じゃ」

「じゃあ黙れ」

あれくらいの攻撃じゃ沈まないのが仁王雅治。
このくらいの言葉じゃ黙らないのが仁王雅治。

俺、マジでなんでこんなやつ好きなんだろう。


「聞いてきたんブン太ぜよ」

「おかしいな、俺は中にいれるクリームの種類を選べって言った筈なんだけど。誰がいつそんなキモい解答を求めたよ」

「キモくない!ブン太可愛いけん、生クリーム似合うのうって思ったことを口にしたまでじゃ!実際似合っとったし」

「その発想がうざいし気持ち悪い。なんだ可愛いから生クリーム似合うって馬鹿か?やっぱお前は馬鹿な変態詐欺師なのかよ?あと最後の一言ほんっとに要らなかった」

「馬鹿と変態は余計ぜよ」

「馬鹿と変態こそ必要だろぃ」

「ブン太の手にかかれば男はみんな変態になれ「あ、焼けた。おー、ちゃんと膨らんでんじゃん」

仁王と無駄話してる間にシュー生地が焼けた。色も形も上出来。

「俺よりシュー生地ですか」

「あったりまえ」

こんな馬鹿より甘いもの優先しないとか有り得ないだろ。

「おお…いつの間に生クリームを準備して…」

「仁王と喋ってるとき。お前が抱き着いてたせいですげーやりづらかった。つーかなんで気付かねんだよ」

「……ところてん」

「は?頭ん中まで綿毛化したのか」

「いや、ところでって言おう思ったら口が勝手に動きよった。うん、ところで、他の人らは?」

「あー、女の子たちは、仁王が来てすぐに、他の班の子と話してくるーって意味わかんないこと言ってどっかいった。男は仁王怖いし適当にフラフラしてくるわってどっかいった」

たぶん女の子たちは気使ってくれたかなんかで(解せぬ)、男は本気で怖がってんだろうけど(全て仁王のせい)、これ何も知らない奴が見たらハブられた上に班員分のシュークリーム作らされてる可哀想な子だよな。
幸村くんあたりにバレたらすげー笑われそう。もう指さされて涙流しながら笑われそう。うっわ、腹立つなそれソレ。


「……」

「仁王怖がられてんね」

「牽制効果絶大じゃな」

「俺友達減ったらどーしてくれんの?」

「俺と話しとればええよ」

「お前つまんないから嫌なんだけど」

「ちょっと待ってそれは傷つく」

傷つくって。お前に似合わない言葉ベスト5に入るわその言葉。
どれだけ傷つくのかを事細かに説明してる仁王をスルーして、俺は黙々と作業を進める。生クリームとカスタード、1人2種類ずつにしたシュークリームはなかなか上出来だ。

「おい」

「ん?」

「シュークリーム出来た。食う?ブン太様特製天才的シュークリーム」

「…いただきます」

そう言って口を開けた仁王に、ご要望通り生クリームを挟んだ方のシュークリームを突っ込んでやる。

あ、ちょっと苦しそう。ザマァ。

「ど?ど?うまい?うまい?」

「…。自分で確かめてみんしゃい」

「なにっ……ん、」

突っ込まれたシュークリームをやっと飲み込んだ仁王に聞けば、どっかで聞いたことあるような台詞が返ってきた上に今度は俺が舌を突っ込まれた。


なんだ、どうして急に盛ってんだこいつ。






「……ぷは、はぁ……長いわ!」

「長ないよ」

「いやいやいやいや」

「そんな大声だしさんな。その可愛い顔、誰かに見られたらどうするん」

「あっ」

いきなりのことでとんでたけど、何を隠そう今は授業中、ここは家庭科室。何も隠せない。周りにはもちろんクラスのやつらがいる。
割と冷静だった頭に熱が上がってくのがわかる。きっと顔も赤い。
周りにバレてなかったかとか、反応を確認したいけどもしバレてたらそれはそれで確認しずらい。ああもう、どうしよう。
ぐるぐる悩む俺をよそに、キスをしてきた仁王はいつもと変わらない涼しい顔をしている。
なんだか悔しくてキッと睨みつけてやった。

「?」

「誰かに見られてたらどーすんだよ!」

「可愛い顔を?」

「違うわ馬鹿!」

「まあ、ブン太を狙う輩が減って好都合じゃな」

「っ、」

は!え!なに!何その顔!に反して聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらいの甘すぎる声!ああなんでもうこいつは!さらっと!そんなこと言うかな!普段はクズみたいな人間のくせに!あーもう!不意打ちとか聞いてないし!て俺は乙女か!なんであんなことにトキメいちゃうかなあああああああ!

「はっ、…なんか疲れた…」

「疲れた?ていうかなんで照れとるん」

「別に!」

「やっぱりシュークリームよりブン太の方が甘いのう」

「オヤジくさ。言ってろ変態」

「オヤジは傷つくって」




テメェの声のが甘いわ馬鹿。






...




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