俺はすげえ腹が減ってて、だから購買で勝ち取ったいちごジャムの激うまパンをすでに2個食ったわけで。そこで空見上げてる白髪ヤローもさっき購買でパン買ってたから腹減ってんだなって思ってたのに「これいらん、あげる」なんてふざけたこと抜かしやがった。けど、冒頭で言ったように俺はすげえ腹が減ってるからお礼の言葉と笑顔まで付けて受け取ったわけ。因みに今食ってるのはそのパンなんだけどさっき食ったいちごジャムの方が美味いのは揺るがない事実で…ってあれ?なんかよくわかんなくなってきた。まあとにかく、仁王から貰ったパン食ってたら空を見上げてた仁王が急に俺の方向いてなんか話しかけてきたの。

「地球の始まりって、どんなんじゃったか知っとる?」

某国営放送局でやってそうな話題だな、って脳内ツッコミを入れて「わかんない」とだけ答えた。いや、本当は知ってるよ。俺一応テレビっ子だし、弟いるから自然とN〇Kとか見ちゃうし。でも今はそんなの答えてる暇なくてパン食べる方が大事なんだよ、許してね。俺の可愛さに免じて許してね。
俺がわかんないって答えたら、仁王はなんか空の果てっていうか、まあそれはどこなのか知らないけどとにかく遠いとこを見るようにして説明しだした。

「地球ってな、最初はなんもなかったでっかい岩の塊に、何回も何回もいろんな隕石がぶつかってできたんじゃって。そのうち、生き物が生まれて…あ、でも生き物が生まれてからも隕石は何回かぶつかったりして地核変動とか起きて今の住みやすい環境ができあがったらしいんじゃけどね」

「ふーん」

説明の内容は俺が予想した通りのもので。特別だからなんだとも思わないし、興味があるわけでもない。それより、俺は寧ろ地球の終わりの方が断然興味深い。マヤ文明だかなんだかよくわからない文明の予言では2012年12月22日に現代は終わるらしいじゃん。しかも地球が破局して。地球の破局ってなに?いろいろ気になる。その他にもいろんな文明とか偉人とかが残した世界滅亡説だって気になる。までもその話を俺から切り出すことはしないけど。なぜなら腹を満たすのに忙しいから。

「…でな、始まり方は割とどうでもええんじゃよ。俺は終わり方が気になるんじゃ」

そのまま空かどこかよくわかんねえ遠い場所を仰ぎながら言った。声にだしてないのに同じこと考えてたなんてちょっと感動的ィなんて女々しいアホみたいな考えを牛乳で流し込み、ここに来る前に女の子に貰ったスナック菓子の袋に手をかける。

「どうやって終わるんじゃろうなあ…」

コイツは割りとファンタジー好きで、リアリストに見られがちだがSFだとか宇宙だとか、とにかくロマンチックなものが好きだ。そんな、恐らく頭は半分未来にイっちゃってる仁王にさりげなく視線を移すと、普段は絶対みせないどこか切なそうな、哀しそうな、なんともいえない顔をしてる。いや、泣きそうなって表現が1番しっくりくるな。
そんな顔を見たらなんかちょっと俺まで切なくなっちゃったからぴったりくっついてみた。うん、あったかい。

「ん?どうしたん、急に」

「別に?地球がどーなろうが俺はずっとこうして仁王の隣にいるよ」

自分でもよくわからない言葉が出た。これは確かに本音だけど別に今言うことじゃないし、ていうかこいつの前で絶対こんなこと言いたくなかったんですけど。でもこの一言のおかけでどこか遠いとこしか捕えてなかった仁王の目に、やっと俺が映った。

「おん、ありがと」

ヘニャっていう効果音が聞こえてきそうなくらい顔を緩めて笑った。仁王のこんな表情久しぶりに見たせいかなんだか心音が速まった気がする。俺が今こいつの普段はあまりお目にかかれないこの笑顔にときめいちゃったってのは紛れも無い事実で、紛れも無い事実だからこそ必死に隠そうとしたんだけど隣にいるのは詐欺師とか呼ばれてる人間観察に物凄い長けてるやつで。そのせいなのか俺の隠す演技が下手だったせいのか、折角のヘニャ顔がいつもの変態くさい笑顔になりやがったから少し身構えてたら、

「俺もずっとブン太の傍におるよ。相思相愛やね」

だって。
案外まともなことだった。あ、こいつにしてはまともってことね。なのになんかくすぐったくなってきっと俺の顔は赤い。なにこいつ、意味わかんね。てゆうかこんなんで赤くなる俺が意味わかんねもうなに。今日はわかんないことだらけだ。
………けど、たったひとつわかったことがある。



「世界の終末にも、俺はお前の隣でお菓子が食いたい」







...
雰囲気を、ドウゾ




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