「頼もー!」

「ちょっ、幸村くん静かにして!」

「ほたえなや幸村!」

「…………誰?」

「あ、この子名前なんだっけ?景虎さんの娘ってのと日向伊月の同中ってのは覚えてるんだけど」

「ほんと女の子の名前覚えられないよね。リコちゃんだよ、相田リコちゃん」

「ちょ!貴方なんで私の名前知ってるのよ!誰なの!?あと貴方もパパの名前…!」

「すんませんほんま自由人しかおらんですんません」

「あーはいはい目良い子ね。うちにも欲しいなあ、あの能力持った人」

「定期的に跡部に診てもらえばいいだろい。それより本題」

「何それ跡部診断?死んでも嫌だね。黒子君いますか?」

「いるけど…貴方たち誰なの?黒子君の知り合い?バスケ関係者じゃ無さそうだけど」

「かくしか」

「僕ら黒子君の中学の同級生なんですけど、たまたまこの近くまで来ていて、そういえば誠凛に進学したんだよなあなんて話をしていたらなんだか懐かくなってしまい是非会えたらなと立ち寄りました。先程から失礼なことの連続で一刻も早く謝るべきだとは思っているのですが、久方ぶりに会えると思うとらしくもなく心が弾んでしまって…お見苦しい姿を晒してしまい申し訳ありませんでした。もしお時間よろしければ、少しでいいのです、黒子君にお会いできませんか。と申しております」

「文系やばい…」

「そう……あと10分で休憩だから、その時でいいならどうぞ」

「ありがとうございます」


「ブン太すごいね、びっくりしたよ」

「俺がびっくりしたよ。何かくしかで話通そうとしてんの?」

「通るかなって。テヘ」

「ブン太の説明とブン太の微笑みであの子だいぶ警戒心薄れとったな。普通にすごいと思った」

「ちょっと、俺のことも褒めろよ!」

「どこを!?」

「つーかリコちゃん案外ちょろいな」

「高校生なんてあんなもんだよ」

「やめんしゃいお前ら」

「すいません、黒子です」

「あ、やっと来た!お疲れ様ー」

「おつかれさん」

「お疲れー黒子っち!ここ座る?」

「あ、ありがとうございます。…黒子っち?」

「やべ、癖で」

「黄瀬くんの知り合いか何かですか?カントクから中学の同級生が来てると聞いていたのですが、すいません、僕貴方がたが誰なのかわからないです」

「わからなくて当然だよー。むしろ知ってたら怖い。え?なんで知ってるの?気持ち悪!てなる」

「そんなにですか…。で、なんなんです?」

「いや特に何も」

「……はい?」

「あーもーほら言うたじゃろ。俺言うたじゃろ幸村」

「貴重な休憩時間にごめんな黒子くん。この人幸村って言うんだけど、なんていうんだろ、すげえ赤司くんに似てんのよ。でも自分じゃ絶対違うって言い張るわけ。俺ら的にはもう帰りたいし黒子くんも開放してやりたいんだけど、」

「それじゃ俺がわがままプリンスみたいじゃない!」

「何わがままプリンスって。意味分かんね黙って。で、このわがままプリンスの話を今からするから、あーこれ赤司くんと同じにおいするわーって思ったら赤司くん認定してあげてくんねえ?」

「ブン太が冷たい…反抗期だ…」

「すまんな黒子君」

「事情はわかりましたが、一体なぜそんな話に…というか、もしかしてキセキの世代のことを知っているんですか?」

「経緯話してたらろくに休憩取れずに終わりそうだから、まあ省略させて。キセキの世代のことは知ってるぜ、てか高校バスケはけっこう詳しいつもり」

「そうなんですか。わかりました、その、幸村さんのことを話してください」

「ありがとうな!話早くて助かるわ」

「だから俺は赤司じゃないってば!違う!絶対違う!わがままプリンスじゃない!」

「もう今の状況がわがままプリンスなんじゃけどの」

「仁王、幸村くんの赤司的エピソード頂戴」

「あー……幸村の言うことは絶対。従うのはもちろん、歯向かったところで覆ることはないし、そもそも歯向かうなんて許されん」

「うわあ、赤司君そのままですね」

「それ赤司に寄せてない!?」

「寄せとらん寄せとらん。はい次ブンちゃん」

「んーと、うちの部は勝利が絶対。勝つことが絆」

「赤司君…というか帝光中の理念と同じですね。幸村さんはキャプテンですか?」

「もちろん」

「ならもうほぼ赤司君です」

「部の方針はしょうがないじゃん!あ、なら外見は?外見は全然違うよ!」

「そうですね、確かに見た目は違いますが…綺麗に整った顔をしてる点では同じですよ」

「は!?そんなのず、るい…まあそこだけは認めなくもないよ」

「綺麗な顔って言われて喜んでる」

「喜んどるな」

「うるさいうるさい!」

「ならもうひとつ。俺らテニス部なんじゃけど、幸村は技として成り立つのかそれ?反則じゃないか?どうやって勝つんだそれ?て技を使う。簡単に言うと相手の五感を奪う。ゲーム中に」

「五感を、奪う…?ちょっと僕の知ってるテニスじゃないんですが」

「赤司くんも相手すっ転ばすじゃろ?あんなんどうやって回避するん?無理じゃろ?つまり?」

「幸村さんはほぼ赤司君です。というか赤司君超えてます。赤司越えしてます」

「黒子くん的にこのわがままプリンスは赤司くん認定してオッケー?」

「オッケーです。ほとんど赤司君としか言いようがないですね」

「酷い言われ様だ…。俺赤司君ってフレーズがゲシュタルト崩壊してきたよ」

「幸村くんのせいだかんな。間違った、わがままプリンスのせいだかんな」

「プリンスオブわがまま」

「仁王殺す」

「なんで俺だけ?」

「僕からもひとつ、聞いてもいいですか?」

「ん?」

「さっき僕が話しかけたとき、皆さん驚きもせずに挨拶してくれましたよね?僕、人に話しかけると十中八九驚かれるんですが…」

「ああ、あのくらいの気配わかるよ」

「え?」

「周りが気付かないのは君の影が薄いからでしょ?だからミスディレクションなんて特殊な技が使えるんだし。でも俺らからしたら、あのくらいの気配に気付かないでどうすんのって感じ」

「物理的に空気だったりが揺れるしの」

「人に気付けねえんじゃボールなんていつまで経っても返せねーもんなあ」

「あの、ほんとにテニスなんですか、やってるの」

「テニスだって!バスケもテニスも野球もバレーも、いつどこから球飛んでくるかわからないでしょ?」

「ボール消えるとか通常運転じゃしのう」

「まあ、ボールはたしかに消えますが。というか僕が消えますが」

「ミスディレクションすげーよな!知り合いにも消えるやついっぱいいるし球消すやつもいっぱいいるけどさ、マンツーマンでマークされてんのに消えれんのはやっぱすげーよ!」

「何ブン太尊敬してるの?俺も消えようか?」

「やめえ幸村。出来てしまいそうやき」

「縮地方を断続的にやれば出来るよね。ボールは燕返しか星花火で消して…あ、相手の視覚奪ったらいいんだ!手っ取り早い!ね?」

「なんですかこの怖い人!え!?怖い!赤司君なんて目じゃない!」

「やめなよ幸村くん!黒子くん怖がってる!すげえ怯えてる!」

「ごめんな!ほんまごめんな!これでいつも通りなんじゃよ!いや今日はまだ大人しい方じゃ!」

「こ、これで大人しい…!?あとうっかり流しかけましたが消える人いっぱいいるって僕のアイデンティティもクソもないですよね!?テニス怖い!」

「黒子くーん!そろそろ休憩終わるわよ…って、どしたの!?」

「ああ…すいません、うちのわがままプリンスがちょっと怯えさせちゃったみたいで」

「貴方たち黒子君に何したのよ!?」

「部活の話しただけじゃきそんな心配せんでも大丈夫じゃ。休憩も終わるようやし、俺らも失礼するぜよ。迷惑かけてすまんの」

「仁王急に愛想無さすぎ。それじゃ、お邪魔しましたえーっと「リコちゃん」リコちゃんさん!」

「はァ?」

「じゃ!俺ら忙しいんでこれで!」

「ほんとうちのわがままプリンスがすいませんでした!」

「最後の最後まですんません!」



「さー次はどっちに行こうかな!」

「都内!?ねえ幸村くん都内!?」

「あははははははは!」

「ホラーだ!ただの!ホラー!!!」

「てか幸村走るの速いちょ待って……待ちんしゃい!」











「結局何だったの?」

「カントク…僕バスケやってて良かったです…」

「は?そ、そう?良かったわね?」

「テニスになんて手出さなくて良かった…!!!」

「…………大丈夫?黒子君」







...




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -