俺の記憶が正しければ、今日はいつも通りの時間に起きて、いつも通りに朝練して、いつも通りに授業を受けた。これから行われる部活にもいつも通りに行く予定だったし、そのままいつも通り部活で汗だくになる予定だった。
そう、『いつも通り』に進む予定『だった』。

目の前の野郎にこんなことを伝えられるまでは。



「お前、今なんて言った?」

「ブン太んこと好き」


少し高い位置に、今までに見たことないくらい真剣な仁王の顔があり、表情や空気から本気なんだってのはわかる。そこ読み間違えるほど馬鹿じゃないし、むしろ空気を読むことには他の連中より長けてるとさえ自負している。

しかし仁王がなあ、俺のこと好きなのか。モテモテな俺はこんなイケメンさえ虜にしちゃうのかあ、ほんと罪深いわ。
…………とか現実逃避してても何も解決しない。なんだか妙に気まずい、あの告白直後の独特な雰囲気が漂ったまま時が過ぎる。

急に予想外のことが起きたせいかプチパニックを起こす約立たずの脳みそを、どうにか叱咤して声を出す。
気の抜けない沈黙は嫌いだ。


「それはなに?ライク?」

「ラブ」


へーそうなんだーラブなんだー。よくも即答してくれたな仁王め。いや、ここまできて悩まれるのも変だけどさ。
しかしこいつがラブだなんてさらっと言ってる相手はれっきとした男なわけよ。そんでこいつも男。………あれ、じゃあこいつはあれか、巷で流行りのガチでホモなあれか。まあ俺別に同性愛とかに偏見ないし気持ち悪いとかも思わないけど、まさかこいつがそうだったとはちょっと予想外かな。だってさ、中学生の分際で女関係の噂が絶えない、なんてあまり見ないくらい節操ないこいつが、ってなるじゃん?確かに俺は女顔だからかそっちの人には狙われ易いと思うよ?実際夜に外歩いてるとスーツ着たおっさんとかに3万でどう?とか言われるし。でもね、こいつもそうだとはね、誰も思わないよね。……え、じゃあなに、彼女いるとか他の奴の女寝取ったとかいう噂は全部嘘なの?

なんかいろいろよくわかんねえな。噂全部鵜呑みにして信じてるわけじゃないけど、実際よく女連れてんの見るし…。しかも毎回違う人。


「ブン太?」

「えっ、うん?」

「引いた?」

「引いてねーけど、…びっくりはしてる」

「いっつも告白されちょるブン太がびっくりするとか」

「相手がお前だからだよ」

「…あー」

え!?なんだよその反応!!なんでちょっと複雑そうな表情すんだよ!逆に困る!なんか困る!!
てか俺もさ、もうちょっと気の効いたこと言えないものかね。ストレートすぎんだろ、さっきのは。

「返事は」

「はいっ!?」

「いや、はいやのうて」

「え、あ、ああ!ち、ちょっと時間頂戴?」

「おん、了解じゃ。じゃ、先に部活行っとるき」

「お、おう」

返事は、ってお前。疑問文で言えや疑問文で!肯定文ってほら、先生に怒られたときの最後のやつの感じじゃんか。
もうやるなよ?、……、返事は?、うぃす、返事は!、はい
みたいなさあ!みたいなさあ!条件反射ではいって言っちゃうつの!

てか俺!また俺か!また俺だよ!

な ん で 振 ん な か っ た し !
時間もらったって答えは変わんないじゃん。いつもなら戸惑いなく振るのにまあ暇だったら付き合うけどさきゃー丸井くんサイテー!

いやいやいやいやいや、とりあえず落ち着け俺。

仁王はクラスメートで、チームメートで、…友だち?周りと比べたら仲良い方だけど、あんま喋んねぇぞ?てかなんで俺?柳生とかの方が仲良いじゃん?あーもう、疑問だらけだよ!
そして、俺は仁王のことを好きなのか。友達として?恋として?友達としてだったら、さっきすぐ振れんじゃん。いやでも俺ってそっちの気あんのかな。くっそ!超わかんねぇ!謎!
つかあいつは、俺がもし俺も好きって答えたらどーするつもりなんだよ?付き合うの?でも普通は告る時点で付き合ってくださいとか言うよなあ。気持ち確認して終わり、なパターン?うっわ1番嫌。あれ、ちょ、なんで俺が仁王を好きな体で話し進んでんの。無意識っておまっ、超怖いんだけど!無意識に好きな体で話し進む?それって俺が仁王のこと好きみてーじゃん!

…………好きなの?

は!?好きなの!?たしかに仁王はかっこいいしテニス上手いし何だかんだ相談聞くのとかうまいけど、でも何考えてるかわかんなくて、実は何も考えてなくて、意地悪で、結構抜けてて、

……好きなの?

いやねーわ、うん、ねーわ。




………柳に相談してみよう。













(そろそろ参謀に相談しに行った頃かのう。自分で気付いてくれた方が嬉しいんじゃけどなあ…)











...




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