▼柳生視点



「正直な、フェラしとる時の顔って何が興奮するんかわからんのよ」
「AV?」
「そそ。あの顔見とってもなんも思わんのやけど」
「まあお前EDだしな」
「やめようそういう嘘つくの?」
「ハイハイ」


 また始まりました。始まってしまいました。題して『仁王君と丸井君のとってもとっても教育上よろしくない会話』。
 この二人は実に中学生らしいと言いますか、性に貪欲になる年頃を全うしていると言いますか、いや、そんな健全なものではありませんでしたね。性欲を具現化したような存在ですし、不純同性交遊真っ盛りの要注意物件です。健全に不健全とはまさに彼らのことを言うのではないでしょうか。
 一方で、そんな話題に耐性の無い方がうちの部に存在していることも忘れてはいけません。誰だかご存知ですか?そう、真田君です。レギュラー専用部室なんて贅沢な物を与えられている私たちですから、当然着替えをしている今、この場にはレギュラーメンバーしかいないのです。が、そのレギュラーメンバーにはもちろん真田君もいるので何も安心できません。まあ、半分くらいは会話の内容を理解できていないようなのであまり大事にはならなくて済むんですけどね。
 私がいつものように真田君の心配をしていれば、その会話に興味津々、目を爛々とさせて加わる切原君が………おや、今日は珍しくまだのようですね?


「直接されてもいまいち、息子の反応が」
「あー、ん?お前俺がしたら興奮するじゃん」
「それはほら、ブン太やから?」
「せめて言い切れよ」
「ブン太の顔なら興奮する。しかも上手いし」
「お前ほんと俺の顔好きな」
「おん。大好き」
「俺もお前のカラダ好き。しかも上手いし」
「両想いやね」
「そだね」


 や、やめろばかたれ共がああああ!!!黙って聞いてりゃなんですかその会話!!!誰が!悲しくて!!チームメイトの!!性事情を!!知らなければならないのですか!!!いつものことながらホントねーわ!!……おっと、つい口調が荒れてしまいました。心の中とはいえ危ない危ない。
 しかし、彼らの関係性が未だに不明瞭なことに若干の苛立ちを覚えますね。両想い、とは恋人間で使う言葉でしたっけ?顔がすき、体がすき、とは恋人に言うものでしたっけ?私の感覚が正しければ決して言わないはずですが。これらのことから弾き出される二人の関係は世に言う『友達以上恋人未満』なのでしょうか。
 私がいくら考えたところで何もわからないし、そもそも考えたくないので意識を着替えることに集中させましょう。

 ふと隣を見れば、何やら真田君の眉間の皺がマリアナ海溝のごとく深く深く刻まれています。

 ああ、これは、







 真田君が怒鳴り二人の説教が始まるまで、あと五分。










...




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