▼丸井と赤也 「俺、考えたんすけど」 「ん?」 「先輩らに、何でもいいから何かしらで勝ちたいなって」 「いやそこはテニスだろぃ」 「テニスはまだ無理っす」 「幸村くんたち強いからなー」 「いや、丸井先輩にも勝ててないじゃないっすか俺!先輩らとまともにやったシングルスで勝った記憶ないっすもん!」 「お前あれ、シングルスで俺に勝てないとかまじ終わってんぞ。俺なんてシングルスしたらレギュラー最弱だからな」 「その自虐がそのまま俺の心に突き刺さってるのわかって言ってますよね?ねえ?」 「でもほら、他校のレギュラーには勝ってるしいいじゃん?」 「だって他校には五感奪ったりするような奴いないんすもん」 「幸村くんは別格。なんかさ、関東大会で青学と当たった時に、青学の奴らって俺らのこと手塚が七人いるーとか教え込まれてたんだって。でもさー考えてみ?手塚は五感奪わないし雷打たないし誰かにならないし肺4つもないし、眼鏡は全反射してないしネット際のボレーしないし相手の膝壊そうとしたりしなくね?手塚七人いなくね?」 「……………いや、たぶんそーゆう意味じゃないと思いますよ」 「は?ちげーの?」 「手塚レベルが七人、てことでしょ」 「あー、なるほどね。いや幸村くんは手塚凌駕してるっしょ。五感奪えんだよ五感。意味わかんねーじゃん、五感奪うって。ただただ恐怖じゃん何よりも怖いじゃん」 「丸井先輩、幸村部長になんかされたんすか」 「お前が入ってくれてからは減った」 「なんかそれすげー嫌!」 「…ん?つか何の話してたっけ?」 「俺が先輩らに勝ちたいって話っすよ!」 「ああ、それよそれ。テニスじゃないんなら何で勝つってーの?勉強はまず無理じゃん。顔面も…1番は無理じゃん。差し入れの数もまあ無理じゃん。どうするよ?」 「そーなんすよぉ…。テニス抜きにしても先輩らのスペック高すぎて俺ついていけねーんすよ…」 「喧嘩強くなってみるとか?」 「うちの喧嘩番長がなんか言ってる!!アンタより強くとか無理だわ!」 「いやいや俺か弱いし、ちょ、やめてイメージ崩れるから」 「今さらなんのキャラ作りっすか。とりあえず喧嘩で勝つのは無理っすね」 「あ、やべーの閃いた!テニスへの想い、とかどーよ!」 「……」 「何だめ?」 「や、だって丸井先輩顔にやけてるじゃないですか。明らかに馬鹿にしてる時の顔してるじゃないですか!」 「してないしてない」 「だいたい、そーゆうなんか青春アニメみたいなのは青学の担当なんすよ。名前も青春学園だし」 「青春学園って俺初めて見たときすげーくそだせえって爆笑したわ」 「ちょっとわかるけどそれは言っちゃだめっす!」 「つーかお前青春系無理ならもう勝てなくね」 「確かにうちには青春青春してる人いないけども!だからこそ俺もそうでいたいっす!立海のかっこいいとこってそこじゃないっすか!!」 「いやわかんねーわ」 「俺、立海に入るって決めた理由がそれなんすよ。テニスの強豪校なら割りとどこでもいいとか思ってたんすけど、試合観に行ったりいろいろ調べたりしてると特色とかわかってくるじゃないすか。青学は青春してるいかにも主人公タイプのとこでなんか嫌で、氷帝はあの変なコールが無理でした」 「あー、それはわかる。そこ二つは俺も絶対やだ。他のとこは?」 「聖ルドルフは正直全国で優勝できなそうなんでパス、六角も同じ理由でパス、山吹は不良怖いからパス、て感じっすね」 「関東圈しか考えてなかったんだ?」 「いや、他も考えましたけど、四天宝寺はお笑いお笑いすぎてついていけねーし沖縄とか九州はちょっと遠すぎるかなって」 「で、うちに来たと」 「っす。立海のこの、勝つのが当たり前みたいなとこにすっげー惹かれたんすよ!馴れ合いでテニスしてないみたいな、勝てないやつはいらないみたいな、そんなとこが今でも大好きっす!」 「やべー歪んでるよこの子やべーよ助けてお母さん」 「けどこのちょーカッケーとこでちょーカッケー先輩たちがいるうちに何かしらで一番になってちょーカッケーって褒められたいのに全然何をとっても勝ち目ないなんて…」 「ちょーカッケーがゲシュタルト崩壊おこしそうだな。頭の悪さ露見してんぞ」 「ほら!そうやって!どうせ俺は頭も悪いっすよ!」 「急にキレんなよ最近の若者怖い!」 「先輩だって最近の若者じゃん!私服おしゃれだし!」 「私服関係ないだろい。あ、センス系のとこで一番になれば?服とかもそうだし、音楽とか、絵画とか、料理とか」 「………前にレギュラーで遊んだときみんな私服だったじゃないすか」 「ん?…ああ、先月のな」 「そうっす。それで初めてレギュラー全員の私服見たんすよ」 「そっかお前初めてか。感想は?」 「副部長が案外普通でつまんなかったっす。柳さんと幸村部長は頭いいリア充大学生みたいだったっす。柳生先輩とジャッカル先輩は予想通りな感じだけど結局スタイル良いからぐぬぬぬぬって感じだったっす。仁王先輩と丸井先輩はいつも通りモデルとおしゃれさんでした」 「俺だけすげー漠然としてんな」 「丸井先輩って服の系統いっつもばらばらっすもん、おしゃれさんとしか言いようがないじゃないっすか!色んなジャンル着てる人ってどんな雑誌読んでんすか?」 「俺どっちかっつーと服目的より暇潰しに読むな。CHOKICOKIとかPOPYEとか古着屋さんとかメジャーなやつ。赤也はsmartとかELOとかその辺なイメージ」 「うお、正解っす。やっぱセンスで一番も無理っすよねー…。丸井先輩料理もできるし」 「一番は難しいなー。よく考えたら音楽も無理だろい。クラシックなら幸村くんと柳生、演歌とかそっち方面は真田、音楽歴史は柳、洋楽は仁王、歌謡曲系は意外とジャッカルが詳しいし」 「追い討ちをかけるように丸井先輩バンド詳しいっすもんね…」 「あ、けど楽器はみんなできなくね?」 「楽器に手だすとテニスの練習時間減るってか、テニスしすぎて楽器練習する暇ねーっすよ」 「たしかに」 「あーもう!むりっすね!むりむり!」 「諦めろい」 「1年の差ってでかすぎねーっすか」 「神様って不公平だよな、どんまい」 「適当!アンタ飽きたでしょ!?」 「先輩をアンタ呼ばわりするワカメの頭の悪い話なんて序盤から飽き飽きしていながらも付き合ってあげていますが何か?」 「いきなり攻撃的になんの本気で怖ぇ!!文系怖ぇ!」 「別に早く帰んなきゃないとかじゃないけどウチで仁王待ってんだよ今日」 「え?仁王先輩って今日休みなんじゃないんすか?」 「熱だして休んだはいーけど寂しくなったから俺ん家来たんだと。でも俺いるわけねーじゃん?だから偶然仕事休みだった母さんとお茶しながらのんびり過ごしてるって」 「いやおかしい!いろいろおかしい!」 「あ、やっぱりそう思う?母さん昨日も休みだったのに今日も休みなんて珍しいよな、普段連休とかねーのにさ」 「そこじゃねっすよ!?」 「まーよくわかんねーけどそーゆうことだから俺帰るな。一番の話は柳にでもしとけぃ」 「えー」 「じゃーな」 「………そうだ、一番まともな奴になろう」 ... |