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※現パロ大学生

新学期が始まり、また慣れない講義が始まった。学科問わずの授業だったので、知らない顔で溢れ孤独を感じる。後ろ側の席へつき授業が始まろうとしていた頃に「隣いいかい?」と聞かれ、断る理由もなかったので頷いた。後ろの席は目立たなくて好きだったというのに、そこには目立つような大きな体をした男が座るようだ。その図体の良さに、自分が前側に座ると後ろの席の子が見えなくなると配慮し、いつも自分から後側へ来ているそうだ。
彼は自分をジョナサンだと名乗った。一緒に講義を受けているうちに、紳士的な素振りとその綺麗な顔立ちに思わず見惚れてしまう。大学に通い始めてから、自分好みの人を見つたのは初めてであった。会話の一環で彼が鍛えていることを知り、サークルでもやっているのかと聞けばラグビーという聞き慣れたワードが返ってくる。幼馴染と同じということに気づき、ディオが自分の知り合いだというと距離が縮まるのにはそう時間はかからないものであった。週に一度しかないこの授業も私にとっては、ジョナサンに会える唯一の楽しみとなる。講義が終わってからも浮かれてしまい、思わずディオにジョナサンと一緒の講義だったとメッセージを送った直後に携帯が鳴る。表示を見れば、ディオからの着信だった。何か用事でもあったのだろうか。

「もしもし、ディオ?」
「なぜジョナサンを知っている」
「いきなり何を言い出すかと思えば..同じ講義で隣の席に座ってたの」
「隣だと?!」
「そう、偶然。ディオは優秀でラグビーも上手くて人気者だよーって褒めてたよ。よかったね!..はあー、ジョナサンって優しくてかっこよかったなあ」
「カッ?!」
「とっても紳士的でね、ってもしもし?!」

あ。電話を切られたようだ。あの自尊心がアホみたいに高いディオのことだ。きっと私がジョナサンに何か告げ口しなかっただとか気にして電話をしてきたのかと思っていたが、突然切られた電話に何が伝えたかったのかわからなくなる。考えても仕方ない、まあいいやと流して次の講義室に向かうのだった。

ディオといえば、校内で知らない人がいないというくらい昔から目立つタイプの人であった。ディオを好み親しむ人は沢山いて、私はその人達を影でディオ信者と呼んでいる。幼い頃から親の付き合いで仲が良かったとはいえ、腐れ縁というのか進学先にはいつもディオがいた。高校だけかと思いきや、ディオが進路に悩む私にこの大学を勧めたのがきっかけだ。そんなに大学へ進学したいわけではなかったが、後に先生も親にも偶然なのかディオが勧めてきた大学にしなさいと言われた流れで来てしまったのだ。
私の人生、どこにいってもディオの存在は常に付き纏っていた。大学を入学してもディオは瞬く間に有名となり、その幼馴染が私だと知ると周りは一斉にディオのことを聞き出してくる。入学して間もなくでディオと大学内を歩いたわけでもないのに、なぜ知っているのかと聞けば他の授業でディオは私と同じ学科の子に私がどこにいるのか聞いたらしい。聞かれた女の子がディオの信者なのかしらないが私との関係を聞いたようで、そのきっかけが噂となり一瞬で校内を駆け巡った。連絡してくれればいいものを、なぜ直に出向いたのか謎である。私の大学生活はそれからディオの幼馴染みの子だ!という目で見られるようになる。目立ちたがり屋でもないのに、私もディオとは違う意味で勝手に有名人になっていった。だから同じ学科の男子とグループが一緒になっても、どこか私を恐れているというかまともに話してくれることはなかった。私に非があるのかと思い、何かしたのかと聞くとディオが怖いから話しかけないで欲しいと言われるのであった。それが嫌で一度ディオに誤解を解いてもらうように頼むと「噂話なんて時間と共に消えるから心配するな」と言われ、ディオがそういうならいいやとすっかり安心してしまった自分がいた。新しい大学生活だったので衝撃的ではあったが、そもそも昔からこんなことばかりだったので今頃気にもすることはないのだ。男子は大体ディオを恐れていたが、それを大学でも味わうだなんて思えなかっただけ。だから私には女友達しかいないわけで、ジョナサンが普通に話してくれたのはとても嬉しかったのだ。しかもディオを知っていたというのに。そのことがあってか今日はとても気分が良かった。そして全ての講義を終わらせ、同じ科の友人と駅へと向かう。友人とは最寄りの駅が近いため、いつもこうして二人で帰っていた。

「ナマエは朝から大学来てたんだよね?何の科目を履修したの?」
「あぁ、うーん。考古学の授業をね」
「考古学?!全然私達の学科と関係ないじゃないの!」
「確かに必修科目じゃないけど、ちょっと興味があったっていうか発掘とかって面白いじゃない?」
「そうね、あんたそういう女子が好まなそうなものを好きになったりするタイプだから、なんか納得してきたわ。私なら爪の間に土が入るなんて無理。で、どうだったの?その授業は」
「かっこいい男の子見つけちゃって」
「はあ?」
「ディオと同じラグビー部らしいの。ディオの存在を知っていても普通に仲良くしてくれたのが嬉しくって」
「いやいや、あんたそれはやばいって」
「なにが?」
「ディオがそんなの許すわけ..」

友人が何かを言いかけている時に後ろからクラクションが鳴った。その音に驚いて振り返ると車に乗っていたのはディオ。家に向かうには、この道は遠回りだというのになぜここにディオがいるのかはわからない。

「ディオ..どうしたの」
「帰るんだろ。同じ方向だ、乗れよ」
「え、良いよ私電車で「..あー、そういうことか。あたしバイトがあるから急ぐね!じゃあ」
...」

ディオに気を取られている隙に友人が駅まで走り去っていった。電車が来るまでまだ時間に余裕はあるはずなのに、物凄いスピードである。バイトってそんなことを言っていたっけと不思議に思いつつ、一人取り残されてしまったので、状況についていけず立ち尽くすとディオが早く乗れと急かしてきたので仕方なく助手席へと回り座った。学生が乗る車じゃないだろうというくらい高そうな車だなあといつも気が引ける。でも車内の匂いはいつも自分好みで、嫌いではなかった。

「今日部活は?」
「休みだ」
「駅の方に何か用でもあったの」
「電話しただろ」
「え?..あ。ほんとだ。ごめん、マナーモードのままで気付かなかった」
「どうせ歩いて駅まで行ったんだろうと思ってな。荷物が重そうだし、これからも乗せてやらんこともないぞ」
「いいよ私電車好きだから」
「...可愛げがないな」
「ディオも電車にしなよ」
「このディオが電車に乗ると思うのか」
「ウケる」

携帯から通知の音がしたので、開くと先程の友達からだった。今電車に乗れたけど、そっちはどうというメッセージだ。どうって言われてもディオの車に乗って帰ってるとしか言いようがない。それよりもバイトなんて入っていたの?と聞けば舌を出した顔の絵文字のみ送られてきた。多分ディオと関わるのが面倒な時に大抵このような対応をしてくるので、なんとなく意思は伝わる。返事を返そうと文字を打っていたので、ディオが話しかけきても視線は携帯のままであった。

「ところで何を履修しているんだ。必要な科目しかいらないだろ」
「え?全部必要だからとったんだけど..」
「じゃあどうして考古学だなんて」
「あー。だって面白いじゃないの、人類の進化っていうか遺跡のようなものが気になって」
「必要ないだろ」
「興味本位だって。あ、そこにジョナサンがいたの。さっき話したでしょ」
「あぁ、本人からも聞いた」
「仲がいいの?」
「ただ同じ部活動なだけだ」
「なーんだ」
「その反応はどういう意味だ」
「ディオが仲が良ければ、もう少し近づけたかなと思っただ、うげぇっ!!」

信号が赤でもないのに、突然急ブレーキをかけたのか反動で体にシートベルトがくいこみ、思わず携帯を座席の下に落としてしまった。ディオの突然の行動に後ろからクラクションを鳴らされ、あたりは騒々しくなる。ご飯食べた後にやられたら絶対この車で吐いてしまうだろう。少し俯いたディオの表情が読み取れない。体調が悪いのかと声をかけなければ、私だって一応は免許を所持しているので運転出来ないことはない。

「ど、どうしたのディオ..具合悪い?私運転変わるよ」

ディオにそっと触れようとすると、背中が小刻みに震えている。心配になって肩を押せば、自然とこちらに向くディオに驚いた。この状況で呑気に笑ってる..?

「なにが、おかしいの...?ディオが進まないから、皆が困ってるっていうのに」
「いや、面白いことをいうからだろ」
「ふざけてなんかないわよっ」
「今まで自分のしてきたことが馬鹿馬鹿しく思える」
「一体なんの話をしてるの。いいから運転しなよ!みんな迷惑しているんだから」
「あぁ、そうだな」

やっと進み出した車にホッとするが、周りの視線が気になり早くこの場から消えてしまいそうなほど罪悪感があった。なのに、なぜディオは人に迷惑をかけておいて笑っていたのだろう。わざわざ道のど真ん中で停車することでもない。その後も思い出したように笑う姿を見て、素直にイカれるという言葉が似合うと思う。ディオの車にはもう二度と乗りたくない。絶対にと心に誓いながら家に着くのであった。

次の日、いつものように大学へ向かう支度をしていた。電車の時間まではまだ30分ほどあるが、この間に化粧を済ませ髪を整えたりしなければならなかった。コンタクトを入れ終わり、いざ化粧をしようとポーチを開けた途端に自分の母親が部屋に入ってきた。ノックくらいしてほしいが、少し慌てた様子であった。

「あんた、何してんのよ」
「何って大学の準備だけど」
「ディオくん待たせてるでしょーが」
「ディオ?なんで?」
「やだわ、この子っ!これから一緒に通うから迎えにきてくれるって話なんじゃないの!」
「してないしてない」
「昨日ディオくんが私に行ってきたわよ。寝ぼけてないでさっさと家を出なさい!はやく!」
「え、化粧してないって」
「待たせてることに申し訳ないと思わないの!?」

私の母はディオ信者である。昔からの付き合いというのもあり、ディオのことになるとうるさい。息子が欲しかった母は、ディオが余計に可愛くて仕方ないそうだ。全然準備も何もできていない段階で、背中を押されて家を出る。一体どうなっているのか疑問に感じていると家の前に止まるディオの車が真っ先に目に入った。昨日心の中で絶対に乗らないと誓ったばかりであるというのに。

「はやく乗らないと遅刻するぞ」
「電車ならまだ30分も余裕があるから先に行っ、「はやくのりなさいよ!」...」

母はどこまでも私の背中を押し、無理矢理ディオの車へと乗せる。ドアまでしっかり閉めて、溢れんばかりの笑顔でいってらっしゃいといい手を振っていた。遠くなる母の姿を見ているのも嫌になる。強引だ、もう少し自分の娘を丁寧に扱って欲しいものだ。

「どうしてお迎えなんか..なんの準備もできてないのに」
「大学ついてからすればいいだろ」
「スッピン公開処刑なんて無理..」
「誰もお前だと気づかない」
「化粧濃くしてるつもりはないんだけど..」
「これからは少し早めに起きるんだな」
「だから電車でいくからいいって」
「電車は危ない」
「安全だって」
「スリや痴漢にでもあったらどうする」
「心配してくれるの?!あのディオが?!」
「してはいない」

言ってることが矛盾だらけである。意味がわからないと嘆くと、心配して欲しかったのかと問われた。そこまで深入りするような関係でもないのに、心配されればたまったもんじゃない。だから別にとそっけない態度で返しておいた。
家から大学までは朝の通勤ラッシュに巻き込まれなければ20分そこらでついてしまう。車から降りて講義室へ向かおうとすると、ディオが遅刻するぞと言って腕を掴まれ引っ張られた。元々はディオが突然家に迎えに来るものだからか、私だって支度できずに急いでいるというのに。転ばないように走って後を追うと、何故だかジロジロ見られるのは自分がスッピンだからだろう。化粧とスッピンの差が酷いだなんて思われたくない。急に恥ずかしくなって顔を隠すことにした。私の講義室の方が入り口から近い場所にあったので先に着いてしまい、ディオはこの先の廊下を歩いていけば自分の講義室に辿り着けるのでここでお別れだ。遅刻すると言い走らされたがまだ10分も余裕があるじゃないか。でも結局は乗せてもらったんだからお礼を言わないといけないので、簡単に済ませるとディオは優しく笑って私の頭を撫でた。なぜ普段そんなことをしないのにするのだろうかわからなかったが、気にせず別れて同じ学科の友人がいる席に座る。不思議なことに昨日バイトだと先に帰って行った友人は、口を開けてこちらを見ていた。

「なんで化粧してないの」
「ディオに急かされて」
「え、まさか朝まで一緒にいたの?」
「は?そんなわけないって」

一斉にあたりの女子がこちらを向いた。何人かは泣いているだけではなく、睨まれているような気もする。自分でもこの状況はあまりよろしくないと場の雰囲気で察してしまう。

「はは、私何かやらかしたかんじ?」
「ディオと付き合ったってそこら中で噂よ」
「は?どこの情報?」
「知らないわよ、私もさっき知ったばかりなんだから」
「デマだよそれ」
「でも今日一緒に来たんでしょ」
「呼んでないのに家に来てたから」
「手を繋いで校内歩いてたっていうのも聞いたわ」
「引っ張られてただけ..」
「さっき頭撫でられたのは?」
「どういう意味なのか私も聞きたいところ」
「まあディオがあんたのこと好きだったのは目に見えてわかるようなものだったし、てっきりオッケーしたんだと思ってたわ」
「だからなんでそうなるの、私とディオはただの幼馴染で」
「あんたそれ以上なにか抜かすようなこと言えば、周りの女子が黙ってないわよ」

今の会話がどこまで聞こえていたかはわからないが、辺りからコソコソと自分を噂する声が聞こえる。幼なじみといいながらディオの隣をキープしていたとか、私興味がないって言っておいて根はディオを求めていたとかはっちゃかめっちゃかである。違うと事実を言ったところで関わる以前にこう決めつけられては、説得するのに時間がかかりそうだ。何よりディオのことなんてこれっぽっちもどうでもいいし興味ないし欲しいならあげるよと言ったら、確実に髪の毛を引っ張られてそのまま校内一周されそうなほどの殺意を感じる。
なにか、良い方法はないかと考えるとやはり私からいうよりもディオが直々に付き合っていないと言ってもらった方が効果的だ。今なら間に合うはずだ、授業が始まる残り5分のところで教室を出てディオの元へと向かう。時間がないが、それでもこの誤解をどうにかしたかった。扉を開けて、ディオの姿を探す。あまりの人の多さにすぐには見つけらないが、何としてでも探し出したい。一刻もはやく解決しなければ私の大学生活は終わりだ。

「あ、この前ぶりだね」

広い講義室で血眼になりながら探していると、私の存在に気づきジョナサンが声をかけてきた。ディオと講義が被っていたのだろうか。突然声をかけられ、会いたかったはずのジョナサンに動揺してしまう。そうだ、はやく解決しなければジョナサンにも誤解されて取り返しのつかないことになってしまう。そんなのは絶対に嫌だ、論外だ。

「君もこの講義取っているのかい?」
「あ、私は違って」
「じゃあディオに用があったっていう感じかな。彼なら向こう側の席に..ってこっち向かってきてるじゃないか。おーいディオ!」
「あ、呼ばなくて大丈夫!私やっぱ帰るから!」
「そんなこと言わずに、せっかくガールフレンドが来たんだからディオも会いたいに決まってるだろ」
「ガッ?!?!」
「ん?」
「ガッ?!?ガッ?!?が、..るフレンド?」
「違うのかい?ディオにナマエと同じだったことを伝えたら、自分の彼女だと返されたよ」
「え?だ、誰に?」
「だからディオだって。嬉しくなっちゃって、まわりの子にも彼女と一緒の講義だったって言っちゃったんだよなあ」

嘘だと知らずに嬉しそうに話すジョナサン。事実でもない噂を広めたのはジョナサンだったのかと頭を抱えるばかりであった。まだ始まってもない恋に終わりを感じた。ショックのあまりに言葉を発せない私はジョナサンの背後にディオがやってきたことに気づく。お邪魔になるからいくねだなんて席へ戻っていくジョナサンに、誤解を解くために追いかけていく元気もなかった。まだ話したばかりだというのに彼女彼氏だなんて聞いて、恋が始まるわけがない。終わった、ディオのせいで人間関係、普段の生活も家も乗っ取られているのは気のせいだろうか。それにしてももう何か行動を起こせるほどの気力もなかった。外で話そうとディオが肩に腕を回すので、払い除けようとしても石のように重たいし動かない。後ろで誰かがやっぱり付き合っていたんだという声が聞こえる。違う、断じて違うんだ。
講義が始まるチャイムが鳴り、教授と入れ違いになる。私も好きでサボりたいとかではない。これが終わったらさっさと帰りたいくらいだ。講義室を出て真っ先にディオに質問する。

「ねえディオ」
「なんだ」
「ディオと私が付き合ってるって噂が流れてるの。ディオから否定して欲しいんだけど..」
「噂なんてすぐに消えるだろ、一瞬だけだ」
「その一瞬が嫌なんだってー!はやく誤解を解いてよ!ジョナサンに彼女だなんてひどいわ!」

何かに気を触ったのか、睨むようして私を見る。あまりこういった表情は見たことがないので、思わず怯んでしまう自分がいた。綺麗だとばかり思っていた赤い瞳をまるで悪魔のように見えてくる。機嫌を悪くしたディオに喧嘩したいだとか嫌われたいだとかそういうんじゃないが、だからって誤解を解きたい私はここで逃げるわけにもいかない。ディオにどうにかしてもらわないと。

「なにが酷いんだ、それはナマエの方だろ」
「私が何したっていうの」
「この俺をつかって、ジョナサンと関係を保とうとしたんだろ」
「それは、そうだけど..」
「相手を知らない段階で興味を持つのはやめた方がいい」
「...」
「それに誤解が嫌なら、実際に付き合ったことにすればいいだろ」
「え?それとこれとは話が..」
「こういうのは得意分野なんだ、任せてくれ。あとでうまいこと言っておく」
「でも..」
「昔から俺のいうことに間違えがあったか」
「ないけど..」
「ならいいだろ。今まで通り全て任せてくれればそれでいいんだ」

納得いかない気持ちが少なからずあったが、今どうこう騒いだところで噂がすぐになくなるなんてことはない。確かに一時的なものであるというのは一理あった。ディオの幼なじみだと噂が広がった時も、自分の周りの男子がディオを恐れて距離を置かれた時も、結局時間が経てばどうにかなっていた。ディオもこう言ってくれるわけだ、今まで頼ってきた幼馴染みの意見を投げ捨てることはできない。それに今すぐどうこう解決できるわけではないのでその時にまた考えようとディオから離れようとすると、何処かからディオの名前を呼ぶ声がする。聞いたことのあるその声に気を取られて、声がする方を探していると腕を引かれバランスを崩す。そして頬に手を添えられ誰がきているのかもわからないまま、ディオの顔が自分へと近づくのがわかった。ズキュゥゥゥンだなんて効果音がなったような気がした。一瞬何が起こったのかわからず混乱している間に、ゆっくりと距離が出来ていく。どこからか悲鳴が聞こえた。割と近い距離でその大きな声に反応してあたりを見回すと、どこの学科の生徒か知らないが女性陣がこちらを指差している。あれはディオ信者に違いないが、それよりも私の心をかき乱すことがある。それはその女性陣と私たちの間に、ジョナサンが立っていたことだった。

「ご、ごめん。教授が探していたから呼びにきたんだけど、邪魔だったかな..」
「ち、ちが」
「気にしないでくれ、寧ろいいタイミングだったと言うべきか..じゃあこれで戻るからまた何かあったら連絡しろよ」

違う、そうじゃないと否定がしたいのにジョナサンまでディオの信者になりかかっている。羨ましいだの熱いだのディオに言っている限りは、最早完全に私イコールディオの彼女という設定が出来上がってしまっているのだと馬鹿な自分でもわかった。ディオはきっとこの噂に付き合っているだけで、噂さえなくなれば私たちは今まで通りに戻れるはずだ。だって、ディオは任せろって言ったんだ。だからこれは決して付き合っているんじゃなくて、ただの演技である。どれもこれも何もかも全ては一瞬だけだ。その場に取り残された私は、ディオのことを好きになる必要だなんてないと自分に言い聞かせるしかなかった。

20200915
ゆうぞら様 1万hitリクエスト
現パロ大学生設定で嫉妬深いディオが幼馴染夢主の外堀を埋めていつのまにか恋人同士になっているお話