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アバッキオに会いたい。助けて貰ってから一週間が過ぎたのだが、兄と買い物にでかけても出会わないし、窓は相変わらずシャッターが閉じられたまま。そもそも治安が良くないところはシャッターまで閉める家が多い。私たちが住むところはいい暮らしをしているわけではないが、さほど治安が悪いところではなかった。だからなんだか怪しい部屋に見えてしまう。私がそう一方的に思っているだけかもしれないが。
そして今日も食品を買いに出かけるが、兄といえば未だ機嫌が宜しくないのかピリピリしていた。昨日、たまたま兄といる時にナランチャに会ったのだが、その時に兄は睨むように私を見ていた。そしてナランチャではないと訳がわからないことを呟いていたのだった。兄は私が誰かに恋をしたと気づいてしまったからであろう。だからこうして関わる一人一人に疑いをかけていた。親代わりな兄にとっては私の行動が心配なのかもしれない。はぁ、面倒なことになったと思うばかりである。

私が兄と一人で外に出歩かないという約束を破らなかったのには、ただ単純に兄が面倒くさい、超がつくほど過保護であるとわかっていたからである。もしあの時一人で出歩いて助けてくれる人がいなくて連れ去られたら、きっと血眼で探し続けるだろう。昔の話だが、学校で私にアジア人は猫でも食べるのかと言ってきた男の子を無視したら、次の日泣きながらもう二度と言わないから許してくれと謝ってきたのであった。なんとなく、彼が謝ってきたのは兄が関係しているのだろうと根拠もなく察していた。それにふとしたタイミングで暴力を振るっていた父親すらも私たちに手を出さなくなった。私を助けてくれるのはいつも兄しかいなかったわけだ。道端で声をかけてきた男の人も、途中で真っ青な顔をして逃げていく。その時はいつの間にか兄が後ろにいたのだが。ひったくりにあっても家に帰れば兄が盗まれたはずの鞄を持っていた。私の知らないところで兄が有名人になったのか。でもそれを知ろうとも思わなかった。私はあまり何事も気にしない性格だったから。
だから兄がギャングの一員になった時もさほど驚かなかったし、両親が頼りにならず兄は唯一家族と言える存在だった為、私を置いて死なないでねとしかいえなかった。一般的な家庭ならギャングになるなと怒るのが普通だろうが、うちには怒る人もいない寂しいものであった。それに私がやめろと言ったところで兄は自分の意思を曲げるようなことはしないだろう。長年一緒にいたせいか、慣れていた私は彼を反対することなく、むしろ応援していたのだった。まあおかげでアバッキオにあえてハッピーハッピーなんですけどね。

「やぁジョルノ、名前」

そうして今度はブチャラティに会ってしまった。彼は兄のチームのリーダーであり、とても優しくて頼りになる人だ。ここの街の人たちはブチャラティの人柄をとても気に入っているので、常に皆から話しかけられているイメージがあった。私も彼の優しい人柄が大好きだ。多分世の女性はブチャラティみたいな守ってくれそうな人を好きになるのだろうが、何故か恋愛として好きだと思ったことは一度もなかったのに、隣にいる兄は私をまた睨んでいる。

「買い物か?仲がいい兄妹で羨ましいな。いつも一緒にいるお前たちを見ていると微笑ましいよ」
「そうですか?きっと妹がいたら、わがままばっかり言って大変ですよ」
「それが可愛いんじゃないか?なあジョルノ」
「えぇ、とっても」
「俺も兄弟が欲しかったと思うんだがな」
「ブチャラティに兄弟の募集をかけたら、世の女性が黙ってないですよ」

なんだそれはと言って笑い出すブチャラティ、絶対意味をわかってない。この人、わざとかって言うくらいこう見えてドがつくほど天然である。

「なんだジョルノ、さっきから俺と目を合わせずに名前ばかり見て。何かあるのか?」
「最近名前に悪い虫がついてるようで見張っているんです」
「そうなのか?」
「お兄ちゃんが勝手に言ってるだけなので勘違いです。気にしないでください」
「勘違いなんかじゃあない!まさか名前、ブチャラティなのか?」
「は?ちょっとやめてよ。誤解をうむから」
「だってブチャラティの妹になりたいと」
「世の女性が黙らないとしか言ってないんですけど。勝手に変換しないでよッ」
「絶対に許さない、こんなに大事にしている名前をオカッパ如きにやるものか!!」

ひえええ!!!この人上司の前でとんでもないことに言い出した!!!!このままヒートアップする前に逃げなければッ!慌てて兄の口を手で塞ぎ、失礼しますとブチャラティに伝えて逃げるようにその場を去った。可能なら今の発言はなかったことにしてもらいたいと願いながら。

「おい、ジョルノ。ブチャラティ見なかったか」

しかしタイミングよく兄の名前が聞こえたと思ったが、私はこの声が誰なのか知っていると同時に、鼓動が早くなった。私が最も会いたかった人がきっと目の前にいる。話しかけられているのは兄の方なので黙って彼を見つめた。あぁ、一週間ぶりだ。長かった、会いたかったアバッキオがそこにいた。

「あっちにいますよ」

そう明らかに不機嫌そうな態度をしていた兄を見て、こちらに視線をむける。私たちは元から話すような仲ではなかったし、以前偶然にも助けて貰った時は、あの時のことを兄には黙っていてほしいと約束して貰ったため、ciaoと挨拶すると少し笑って私の横を通り過ぎた。あの時の約束をした自分の選択を間違っていたとは思わないが、あの時のおかげで私は彼を好きになってしまい、その約束のせいでまた事が起きる前の関係のままになってしまった。寂しいと心が感じている。しかし兄にはバレないようにしないと。外に出てアバッキオに恋しましたといえば、なにを言われるかわからない。それよりも私はアバッキオに恋をしたと言う事が言いたくないわけではない。どちらかと言えば言ってしまって彼にアタックしていきたいくらいなのである。約束を破ってしまった方に罪悪感を感じており、そちらの気持ちが自分に歯止めをかけていたのであった。
どんどん遠くなるアバッキオを無意識に見つめていた。あぁ、走って追っかけてまた、他愛のない話でもいいからしたい。今度は彼がなにが好きなのかちゃんと彼の口から聞きたいけど、今は叶わない。

「アバッキオ...なのか?」
「誰にでも疑いかけるのやめてくれない?」
「...」
「え?なに?いきなり腕つかんで」
「…これは..脈が...早いッ!!アバッキオだな!!」
「もう誰か助けてこの人、人間不信すぎて無理なんですけど!!」

誰でもいいのか、とりあえず思い当たる名前を言い出し質問攻めに合うわけだが、アバッキオとバレるのは時間の問題のようだった。